【背景】子宮体癌は類内膜腺癌が大半を占め、比較的予後が良い。一方で、漿液性腺癌、明細胞腺癌は予後が悪い。近年増加が指摘されているが、組織型ごとの動向や2000年頃から広く普及した術後化学療法の予後への影響については十分な解析がされていない。
【目的】大阪府における子宮体がんの動向と予後について明らかにする。
【方法】子宮体がんの年齢調整罹患率・年齢調整死亡率・10年相対生存率・サバイバー生存率を大阪府の地域がん登録データを用いて解析した。統計解析にはSTATA MP 16(StataCorp, College Station, TX, USA)を用いた。年齢調整罹患率(人口10万対)は1985年における日本のモデル人口を用いて算出し、Joinpoint regression modelを用いて動向解析をした。サバイバー生存率とは、診断から一定年数後生存している者(サバイバー)のその後の5年生存率である。
【結果】子宮体がんの年齢調整罹患率は1980~2000年は緩やかに増加していたが、2000年に更なる増加に転じ、2011年以降は鈍化していた(annual percent change(APC) =2.1、95%CI : 1.3~2.8、APC =9.9、95%CI : 8.4~11.3、APC =4.5、95%CI : 1.6~7.4)。類内膜腺癌、漿液性腺癌、明細胞腺癌、癌肉腫のいずれにおいても年齢調整罹患率は増加していたが、トレンドが変化した時期は異なった。10年相対生存率は、進行期が「限局性」・「隣接臓器浸潤」では2001年以降に有意に上昇していた。「限局性」・「隣接臓器浸潤」の初回治療において、手術+放射線または手術+化学療法を施行した症例数を1997~2000年と2001~2012年で比較したところ、術後化学療法を実施する症例が近年有意に増加していた(p<0.001、p<0.001)。サバイバー生存率は、生存年数が増加するほど上昇していた。
【結論】子宮体癌の大半を占める類内膜腺癌は増加傾向が緩やかになりつつあるが、漿膜性腺癌や癌肉腫などは一貫した増加が続いており、今後しばらく子宮体癌が減少に転じるとは考えにくい。近年10年相対生存率が改善しており、術後補助療法として放射線療法に比して優越性が示されている化学療法が実施される機会が増加し、予後の改善に寄与したことが示唆された。一方で、進行症例は予後の有意な改善は認められず、治療戦略の更なる改善が求められる。サバイバー生存率は生存年数が増加するほど上昇しており、患者にとって大きな希望となり得る情報であると考えられた。