ホウ素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)は,ホウ素中性子捕捉反応と呼ばれるホウ素原子の熱中性子捕捉により生じたα粒子を利用する放射線治療である.熱中性子を捕捉した10Bは,核分裂反応によりα粒子,Li反跳核を発生する.これは,粒子が停止するまでに周囲に付与する単位長さあたりのエネルギー(linear energy transfer:LET)が大きい高LET放射線に分類され,相対的生物効果比(relative biological effect:RBE)も2.5~5.0と大きいため,放射線抵抗性細胞に対しても大きな殺細胞効果を示す.頭頸部癌症例では,組織学的に放射線感受性が低い腫瘍や,抗がん化学療法抵抗性腫瘍のため,拡大全摘術が第一選択となり機能温存ができない症例や,局所進行癌で切除不能のため,治療に難渋する症例が少なくない.そのような症例に対して,臓器機能を温存し且つ,生命予後の延長が期待できる治療法の開発が望まれる.我々はそのような治療法の開発を目指し,13年間の間に頭頸部癌に対するBNCTを以下の4つの臨床研究を行ってきた.
1) 18FBPA-PET検査による頭頸部癌に対するホウ素化合物の腫瘍集積性
2) 再発頭頸部癌に対するBNCT(2003年~)
3) 頭頸部粘膜悪性黒色腫に対するBNCT(2005年~)
4) 新規診断進行頭頸部がんに対する初期治療としてBNCT(2006年~)
今回我々は,頭頸部癌に対するBNCTの上記の臨床研究について,主に
1) BNCTによる,急性期および晩期有害事象
2) BNCTの抗腫瘍効果と治療前18F-BPA-PET検査と治療効果予測
の2項目について詳細な検討を行い,現在京都大学や本学において開発と臨床治験が進められている,BNCT用加速器を用いたBNCT研究へ繋げていくための今後の展望と問題点とを考察する.