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婦人科

日本人若年女性におけるHPVワクチン公費接種者のHPV感染予防効果

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演  者:
工藤 梨沙1、山口 真奈子1、安達 聡介1、関根 正幸1、八木 麻未2、 田中 佑典2、上田 豊2
宮城 悦子3、榎本 隆之1
所属機関:
1新潟大学・大学院医歯学総合研究科・産科婦人科学教室、2大阪大学・大学院医学系研究科・産科学婦人科学教室、3横浜市立大学・大学院医学研究科・産婦人科

<背景>現在我が国で認可されているHPVワクチン(Cervarix®, Gardasil®)は、子宮頸がん高リスクのHPV16型・18型の感染を予防するワクチンである。平成22年より市町村ごとに公費助成が開始され、平成25年4月からは定期接種が開始されたが、同年6月の厚生労働省による積極的接種勧奨の一時中止以降、接種率がほぼ0%にまで落ち込んでいる。
<目的>本研究では、日本人女性における公費接種対象世代でのワクチンのHPV感染予防効果を検証するため調査を行った。
<方法>対象は平成26年4月1日から平成28年3月31日に新潟県内の6市(新潟市、長岡市、上越市、新発田市、三条市、見附市)の子宮頸がん検診を受診した年度末年齢20-22歳(平成5年度生まれ-平成8年度生まれ)の女性。文書による同意が得られた方に対し、細胞診と同時にHPVスクリーニング検査(HC II®)および高リスク型同定検査(TM HPV kit®)を施行した。ワクチン接種歴についてはアンケートによる回答から情報を得た。統計解析はChi-square testを用いた。
<結果>登録者は2196名で、アンケート回答者は2001名(91.9%)であった。ワクチン接種者は1297名(65.8%)、非接種者は675名(34.2%)であった。スクリーニングによるHPV感染率は、接種群11.6%(150/1297)対非接種群15.9%(107/675)であり、接種群の感染率は有意に低かった(p = 0.009)。高リスク型別によるHPV感染率は、HPV16型・18型感染率が接種群0.2%(3/1297)対非接種群1.8%(12/675)であり、感染率に有意差を認めた(p<0.001)。また、ワクチンのcross protection効果が期待されているHPV31型・33型・45型の感染率も、接種群0.3%(4/1297)対非接種群1.5%(10/675)と有意差を認めた(p=0.008)。一方、その他の高リスク型の感染率は、接種群9.1%(118/1297)対非接種群9.8%(66/675)であり、有意差は認めなかった(p = 0.625)。また、研究対象者のうち、公費接種対象者は1829名、公費接種非対象者は367名であり、ワクチン接種率は公費接種対象者76.7% (1261/1644)、公費接種非対象者11.0%(36/328)であった(p<0.001)。それぞれの16型・18型感染率は、公費接種対象者0.5%(10/1829)、公費接種非対象者1.6%(6/367)であり、公費接種対象者での16型・18型感染率は有意に低かった(p = 0.038)。
<結論>HPVワクチンを公費接種した日本人若年女性において、HPV感染予防効果が確認された。


スタチンは腫瘍抑制遺伝子を誘導しシスプラチン耐性細胞を感受性にする

演  者:
厚井 知穂1、和泉 弘人2、栗田 智子1、鏡 誠治1、蜂須賀 徹1
所属機関:
1産業医科大学・産科婦人科学、2産業医科大学・呼吸病態学

【目的】近年、様々な癌腫においてHMG-CoA還元酵素(HMGCR)阻害剤であるスタチンの抗腫瘍効果に関する報告がなされており、薬剤耐性との関連も指摘されている。今回我々は、シスプラチン耐性細胞におけるスタチンの抗腫瘍効果を評価し、その機序について検討した。
【方法】(1) 2種類のシスプラチン耐性細胞(HCP4、PCDP5)とその親株(Hela:ヒト子宮頸がん細胞株、PC3:ヒト前立腺がん細胞株)を用いて、7種のスタチンに対する抗腫瘍効果をWST-8で評価した。また、HelaおよびHCP4にロバスタチンを処理した際の細胞周期の変化をFlow cytometryで評価した。(2) HCP4にロバスタチン 1μMを処理した群と未処理群の遺伝子発現をcDNA microarray解析で比較した。ロバスタチン処理により発現が上昇した遺伝子のうち、腫瘍抑制遺伝子であるKLF2KLF6およびRHOB遺伝子に着目し、これらがスタチンにより誘導されるかをReal-time PCRで評価した。これらの遺伝子を過剰発現させた際の細胞生存の変化を細胞数計測で評価し、細胞周期の変化をFlow cytometryで評価した。
【成績】(1) シスプラチンでは親株が耐性細胞に比べ感受性(IC50値で20.8-33.4倍)であったのに対し、スタチンでは耐性細胞が親株に比べ感受性(IC50値で1.02-68.3倍)であった。ロバスタチン処理によりHCP4においてsub-G1が増加した。(2) cDNA microarray解析においてHCP4でロバスタチン処理により発現が上昇したKLF2KLF6およびRHOB遺伝子は、Real-time PCRにおいてHelaに比べHCP4で低濃度のスタチンにより誘導された。また、これらの遺伝子の過剰発現により、細胞増殖はいずれも抑制され、KLF2RHOBにおいてはsub-G1が増加した。
【結論】スタチンの抗腫瘍効果は、親株に比べシスプラチン耐性細胞においてより強く示された。スタチンは、KLF2KLF6およびRHOBのような腫瘍抑制遺伝子を誘導し、シスプラチン耐性細胞を低濃度のスタチンに対して感受性にしている可能性が示唆された。


卵巣明細胞癌患者由来異種移植片モデルの樹立と特性解析

演  者:
朝野 拓史1、遠藤 大介1、國友 美穂子2、本田 弘平2、野村 俊之2、渡利 英道1
所属機関:
1北海道大学・病院・婦人科、2武田薬品工業株式会社・医薬研究本部癌創薬ユニット

【目的】卵巣明細胞癌(CCC)はわが国で発生頻度が高く、しばしば化学療法抵抗性を来すため新たな治療戦略の確立が望まれている。Patient-derived xenograft(PDX)モデルは、従来用いられてきた細胞株モデルに比べ、臨床腫瘍の性質が保持された細胞モデルとされるが、CCC由来のPDXモデルの報告はあまりない。今回、CCCのPDXを樹立しその特性を解析することを目的とした。
【方法】卵巣癌患者19名から摘出した腫瘍片(G0)をNOGマウス皮下に移植しPDXを樹立した。移植片(G1)は適当な大きさで回収し、遺伝子解析・病理学的解析を行い、残りは別のマウスに継代(G2)した。G0、G1よりRNAを抽出して遺伝子発現および変異解析を行った。またG1を用いて、標準治療薬であるパクリタキセル(PTX)、ドセタキセル(DOC)、カルボプラチン(CBDCA)の薬効評価を行った。
【結果】PDX樹立成功率は31.6%(6/19)で、そのうちCCCは28.7%(2/7)であった。遺伝子プロファイル比較では、非樹立例と比較し樹立例において細胞周期やDNA複製を制御する遺伝子群の発現が亢進していた。樹立例では、G0とG1は発現ヒートマップ上で近傍に位置し、遺伝子発現プロファイルが保持されていた。また遺伝子変異解析比較では、G0で確認された変異はG1でもほぼ維持されていた。薬剤感受性試験では、PTX/CBDCA療法抵抗性患者由来のPDXは同薬剤に抵抗性を示し、化学療法後無再発患者由来のPDXでは同薬剤に感受性を示した。
【考察】PDXの樹立には細胞周期やDNA複製を制御する遺伝子群の発現上昇が関与している可能性が考えられたが、樹立したPDXでは、元の腫瘍の遺伝子発現プロファイルおよび遺伝子変異が保持され、臨床経過をある程度忠実に反映すると考えられた。
【結論】CCCに対する新規治療戦略の確立においてPDXモデルが有用である可能性が示唆された。PDXモデルを用いた新規バイオマーカーおよび治療標的分子の検索、あるいは個々の患者の化学療法感受性の予測に応用できる可能性がある。


各施設における婦人科腫瘍専門医の在籍数と子宮頸癌患者5年生存者割合との関連の解析

演  者:
八木 麻未1、上田 豊1、岩宮 正1、松崎 慎哉1、小林 栄仁1、吉野 潔1、木村 正1
所属機関:
1大阪大学・大学院医学系研究科・産婦人科

【目的】日本婦人科腫瘍学会は専門医制度を2007年に開始したが、婦人科腫瘍専門医(以下、専門医)の在籍状況と治療成績との関連は明らかになっておらずその解析を目的とした。
【方法】日本婦人科腫瘍学会の2009・2010年度の専門医在籍状況のデータ、日本産科婦人科学会の婦人科腫瘍委員会報告の2009・2010年度患者年報、第57・58回治療年報(2009・2010年に治療を開始した子宮頸癌症例の5年治療成績)を使用した。各データは学会誌等で公開されたものである。治療年報は2010年治療開始症例が利用可能な最新版であり、これらを用いて2010年の各施設の専門医在籍数と子宮頸癌患者5年生存者割合の相関について解析し、また2009年のデータを比較することにより在籍状況の変化が治療成績に影響しているか検討した。
【結果】2010年に治療を開始した子宮頸癌症例の5年生存者割合は、専門医の多い施設(2人以上)が少ない施設(0人または1人)に比し有意に高値であった(p=0.011)。進行期の分布には差は見られなかった(p=0.10)。専門医数が増加した施設のうち、0人から1人以上または1人から2人以上に増加した施設において有意に5年生存者割合が上昇していた(p=0.045)。一方、専門医が2人以上在籍しさらに増加した施設では有意な5年生存者割合の上昇は見られなかった(p=0.82)。また、専門医が減少した施設において有意な予後の変化は見られなかった(p=0.88)。
【結論・考察】専門医の多い施設(2人以上)では少ない施設(0人または1人)に比し子宮頸癌の5年生存者割合が有意に高値であった。専門医数が0人や1人の施設で専門医数が増えると5年生存者割合が有意に上昇していた。これは増加した専門医によって標準治療の浸透が推進された可能性が推測される。専門医が2人以上在籍した施設でさらに専門医数が増加しても5年生存者割合が有意に上昇しなかったのは、すでに標準治療が浸透していた可能性が考えられる。また、専門医数が減少した施設で5年生存者割合の有意な低下が見られなかったのは、それまで在籍していた専門医により標準治療が行われていたため、5年生存者割合の低下を来さなかった可能性が考えられた。これらのことから、婦人科腫瘍専門医制度が治療成績の向上に寄与している可能性が示唆された。