【目的】新規アンドロゲン受容体(AR)シグナル阻害薬であるアビラテロン(Abi)、エンザルタミド(Enz)は、タキサン系抗がん剤と比較して忍容性が高く、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療戦略において中心的な薬剤である。しかし、AbiとEnzをどう使い分けるかは不明である。AbiとEnzの作用機序の違いから、血清テストステロン(T)値が治療効果に及ぼす影響を検討し、薬剤選択における血清T値の意義について明らかにする。
【方法】2013年から2016年に当科および関連施設でCRPC患者に対してAbiまたはEnzを開始し、治療開始前に血清T値が測定された115例を対象とした。治療開始前血清T値により2群:T値<5 ng/dl(LowT)群、T値≧5 ng/dl(HighT)群に分けた。2群間においてAbi、EnzそれぞれのPSA奏効率(≧50%のPSA低下)、PSA非再燃期間、全生存率について検討した。PSA再燃はPCWG2の定義に準じた。
【結果】診断時PSA値(中央値)は89 ng/ml、初回内分泌療法奏効期間(中央値)は21ヵ月だった。ドセタキセル治療の既往は31例(27%)に認め、骨転移は60例(52%)、内臓転移は13例(11%)に認めた。治療前血清T値(中央値)は6 ng/dlであった。LowT群ではAbi、Enzはそれぞれ29例、25例に使用され、High T群ではそれぞれ14例、47例に使用された。LowT群においてAbiのPSA奏効率はEnzと比較して有意に高かった(62% vs 32%, p=0.033)。一方HighT群においてAbi、EnzのPSA奏効率に差を認めなかった(93% vs 81%, p=0.429)。観察期間(中央値)12ヵ月中、68例(59%)にPSA再燃を認めた。Low T群におけるPSA非再燃期間は、AbiでEnzと比較して有意に延長した(6.4ヵ月 vs 2.8ヵ月, p=0.040) 。HighT群においても同様であった(NA vs 7.6ヵ月, p=0.039)。多変量解析において、LowT群では、Abi (HR 2.33, p=0.049)、初回内分泌療法奏効期間≧12ヵ月(HR 3.65, p=0.004)、CRPC時骨転移なし(HR2.43, p=0.042)、CRPC時内臓転移なし(HR 4.31, p=0.006)が、有意な効果予測因子であった。一方HighT群では有意な予測因子は認めなかった。観察期間中16例に癌死、4例に非癌死を認めた。全生存率はLowT群、HighT群においてAbiとEnz間で有意な差を認めなった。
【結語】治療開始前の血清T値≧5 ng/dlではAbi、Enzともに治療効果は高かった。しかし、血清T値<5 ng/dlではAbiと比較してEnzの効果は不良であった。このことは治療前血清T値が、Abi、Enzの治療選択決定のための有用なバイオマーカ―になる可能性が示唆された。
<目的>
骨盤リンパ節領域と前立腺局所に異なる線量を同時に照射する強度変調放射線治療(simultaneous integrated boost: SIB-IMRT)を用いて、超高リスク局所進行前立腺癌に対して行った全骨盤照射の長期成績と有害事象について報告する。
<対象>
2006年2月から2009年8月にかけて京都大学医学部附属病院でSIB-IMRTによる全骨盤照射を行った局所進行前立腺癌患者のうち、NCCN高リスク因子を2つ以上有する超高リスク患者44名を解析対象とした。前立腺と精嚢に78 Gy39分割(1回2 Gy)、全骨盤予防リンパ節領域に58.5 Gy(1回1.5 Gy)を同時照射した。晩期障害リスクが高い4症例は2回分減量した。内分泌療法は5ヵ月以上のneoadjuvant androgen deprivation therapy (ADT)を併用し、adjuvant ADTは行わなかった。
<結果>
観察期間中央値は98か月(範囲46 - 130)で2例を除き7年以上観察した。患者年齢中央値は68歳(範囲56 - 78)。全生存率および前立腺癌特異的生存率は、5年はともに100%、8年はそれぞれ85.7% (95%CI 68.6 - 93.9、以下同)、90.1% (72.1 - 96.7)であった。生化学的非再発生存率は5年67.8% (51.7 - 79.5)、8年44.9% (29.2 - 59.3)、救済内分泌療法非使用率は5年74.8% (59.1 - 85.2)、8年61.4% (44.6 - 74.5)であった。6例が去勢抵抗性(CRPC)となり、非CRPC率は5年93.1% (80.2 - 97.7)、8年86.0% (71.4 - 93.4)であった。臨床再発は9例で認め、全例骨転移で、うち1例のみ骨盤内リンパ節に局所再発を認めた。非臨床再発率は5年90.7% (77.1 - 96.4)、8年79.7% (62.9 - 89.5)であった。
Cox比例ハザードを用いた多変量解析の結果、NCCN超高リスク群(T3b以上またはprimary GS 5または5本以上のGS 8 - 10 core)および治療前PSA高値が生化学的非再発生存率における有意な予後不良因子であった。
急性有害事象は、Grade 2尿路系障害を14例(31.8%)、Grade 2消化管障害(頻便、下痢)を3例(6.8%)に認めた。晩期有害事象は、Grade 2尿路系障害(肉眼的血尿)を5例、Grade 2消化管障害(直腸出血)を1例に認め、8年の累積発生割合は尿路系12.5%、消化管系2.3%であった。急性期、晩期ともにGrade 3以上の有害事象は認めなかった。
<結論>
超高リスク局所進行前立腺癌に対するNeoadjuvant ADT併用SIB-IMRT全骨盤照射は、長期間の観察でも有害事象が軽微であり、安全で有効な治療であった。局所照射との有意性については今後の検討が必要である。
【背景】2014 ISUP およびWHOの新gradingにおいて、Gleason score (GS)を新たに5つに分類し、GS7がgroup 2 (GS3+4)とgroup 3 (GS4+3)に分類され、Gleason pattern (GP) 4の成分比率を記載することも推奨されるようになった。一方で、tertiary Gleason 5 (tG5)の取り扱いについては、特に言及されていない。本研究では、new grading systemにおいてtG5の予後に与える影響をretrospectiveに解析した。
【方法】名古屋大学・名古屋第2赤十字病院・小牧市民病院・JCHO中京病院泌尿器科で2005年から2013年の間に根治的前立腺全摘除術を施行された患者のうち術前無治療で手術施行されプレパラートの確認できた1020例。このうち欠損データーを除外した1000例を今回の解析対象とした。全摘標本は、2014 ISUPに順じ1病理医により再評価を行い、術後再発の定義はEAU guidelineに従ったPSA progressionとした。
【結果】診断時年齢は中央値67歳(49-77)、診断時PSAは中央値6.9ng/ml (0.4-82)、観察期間は中央値69ヶ月 (0.7-134)。内訳は、Group1:163例、Group2 (GP4<20%): 225例、Group2 (GP4:20-50%): 211例、Group 2+tG5: 54例、Group 3: 121例、Group 3+tG5: 89例、Group 4: 39例、Group 5: 98例となった。Group2に比べGroup2+tG5は有意に予後が悪く(p<0.0001),Group3も同様にGroup3+tG5で予後が悪化した(p=0.001)。一方、Group3とGroup2+tG5のKaplan-Meier曲線はほぼ重なり(p=0.916)、Group4とGroup3+tG5も同様であった(p=0.854)。Group2がtG5の存在によりGroup3へ、Group3もtG5の存在によりGroup4へupgradeしていた。
【結語】今回の解析から、GS 7 (Group2, Group3)においてtertiary Gleason 5の存在は術後のPSA再発のリスクをあげることが明らかとなった。新grading systemにおいて、特にGroup2およびGroup 3ではtertiary Gleason 5の存在によりupgradeがすることが判明した。術後再発のリスク評価において、tG5の存在を確認することは予後判定に重要であると考えられた。