
【目的】腎癌の約半数の症例はT1aで発見され、その術後再発率は数%と高くはない。しかし、その中に再発転移をきたすtypeが存在することが知られ、症候癌やsarcomatoid成分等が危険因子であるとされている。T1a腎癌の再発・進展危険因子の検証は、術後の適切なフォローやactive surveillanceの適応を決める際に重要な情報となると考えられる。日本泌尿器科学会腎癌登録のデータを用い、pT1a腎癌の再発危険因子について検討した。【対象と方法】2007年に初発の腎癌と診断され、2012年日本泌尿器科学会腎癌登録が行われた3663例より、一次治療として外科的治療が行われた結果、pT1aN0M0と診断された1418例を対象とした。経過観察3カ月未満の症例、1カ月以内に再発と診断した症例、両側発生例、腎内多発例、oncocytomaは除いた。Cox比例ハザードモデルを用い、再発危険因子について検討した。【結果】1418例中58例(4.1%)に再発を認めた。再発までの期間の中央値は31.0(1.1-67.6)か月であり、肺転移が20例と最も多く、その他に骨転移を10例、局所再発を7例に認めた。再発群と非再発群の比較では、性別(男性比)(再発群/非再発群:86.2/71.9%)、腫瘍サイズ(2.80/2.57㎝)、ECOG PS1以上の割合(20.0/10.6%)、透析歴(10.5/4.5%)、低Hb値を示す症例の割合(32.8/14.9%)、異常CRP値を示す症例の割合(25.9/11.7%)、異常Cr値を示す症例の割合(20.7/11.3%)に有意差を認めた。Cox比例ハザードモデルによる再発危険因子の検討では、単変量解析において、①年齢(60歳以上/未満)、②性別、③ECOG PS(0/1以上)、④低Hb値の有無、⑤CRP高値の有無、⑥Cr高値の有無、⑦腫瘍サイズ(3㎝以上/未満)の7因子において有意差を認めた。多変量解析では、性別(男性)、CRP高値、腫瘍サイズ(3cm以上)の3因子が独立した危険因子であった。単変量解析で有意差を認めた7因子について、3因子以下を有する群(A群)と4因子以上を有する群(B群)について、Kaplan-Meier法による解析を行うと、5年再発率はA群2.9%、B群11.6%であり、B群で有意に高値であった。腫瘍径毎の再発率は、1㎝未満:0%、1.0-1.9㎝:2.8%、2.0-2.9cm:3.2%、3.0cm以上:5.8%であり、3cm以上で有意に高く、1㎝未満での再発は認めなかった。【結論】性別(男性)、腫瘍径(特に3㎝以上)、CRP高値はT1a腎癌の独立した再発危険因子であり、術後経過観察やactive surveillance の際に特に注意が必要である。
[背景]ミトコンドリアは細胞内でのエネルギー供給やアポトーシスといった重要な働きを担う細胞内小器官である。癌細胞内では様々な程度の機能障害を呈し、正常細胞との相違を認める。ミトコンドリアDNA(mtDNA)上でも遺伝子変異として認められ報告されている。mtDNAは、全塩基数が16.6kbからなる環状二重鎖DNAで核DNAとは別にエンコードされ、その機能的特徴から核DNAより高率に変異を蓄積するといわれている。今回我々はmtDNAのうち、酸化的リン酸化複合体であるcomplex Iの構成蛋白であるNADH dehydrogenase subunit 1 (ND1)をエンコードするND1遺伝子と腎細胞癌予後との関係に注目し、ND1遺伝子の比較配列解析を行い、変異の有無と術後再発率との相関について検討を行った。
[目的]手術検体から採取した腎細胞癌組織におけるND1遺伝子変異と術後再発率との相関を検討した。
[対象と方法]2010年1月から2010年12月までに、当院で臨床的に腎細胞癌と診断し根治的手術を施行後、2年以上経過観察が可能であった62例を対象とした。個々の症例の臨床病理学的因子は診療録から抽出した。塩基配列はGENETIX ver.12とMEGA6を用いてアッセンブルならびにアライメントを行い決定した。体細胞変異の同定は、正常組織、GenBank、MITOMAPとの比較配列解析で行った。非再発生存率は起算日を手術日として、カプラン-マイヤー法で行った。各因子別の有意差の検定はログランク検定で行った。臨床病理学的因子の相互関係に関する有意差検定はコックス比例ハザードモデルで行った。
[結果]男性48例、女性14例、年齢中央値62 歳 ( 39-80 歳)、腫瘍径中央値32mm (12-105mm) であった。腎摘除術を42例、腎部分切除術を20例に施行した。病理学的因子は、淡明細胞型55例、非淡明細胞型7例、pT stageはT1a;40例,T1b;14例,T2a;3例,T3a;1例,T3b;3例,T4;1例、Fuhrman分類は、G1;1例,G2;53例,G3;6例,G4;2例、脈管浸潤は12例に認めた。観察期間中央値は66ヵ月(29-76ヵ月)、11例に再発を認めた。ND1遺伝子変異は、32サイト、19症例(30.6%)に認めた。臨床病理学的因子による非再発生存率は、腫瘍最大径(>40mm)、pT stage(≧pT3)、Fuhrman分類(≧G3)、ND1変異(変異あり)の群において有意に予後不良であった。多変量解析の結果、ND1変異の有無が独立した術後再発危険因子であった(p=0.0044)。
[結論]ND1遺伝子変異は限局性腎細胞癌の再発予測の有効なバイオマーカーとなる可能性がある。
【背景】
進行性腎細胞癌の約35%に骨転移が発症すると言われ、患者のQOLを低下させるため、骨転移診断は非常に重要である。しかし、2011年の腎癌診療ガイドラインでは、推奨される画像診断方法は明記されていない。骨シンチについては、溶骨性変化をきたすことが多い腎癌骨転移に対する有用性は低いと考えられ、骨シンチ診断支援ソフトであるBONENAVIにおいても、有用性を検討した報告はほとんどない。
【目的】
BONENAVIから算出されるANN(Artificial Neural Networks)値ならびに骨代謝マーカー値が、腎癌骨転移診断に有用かどうかの検討を行った。さらに、両者を組み合わせることによって、腎癌骨転移診断新規モデルの構築が可能かどうかの検討を行った。
【対象と方法】
当科において2008年以降に骨シンチを施行した腎癌患者300例を対象として、集積の異常さを示すANN値を算出し、BONENAVIの有用性の検討を行った。300例のうち、血中もしくは尿中の骨代謝マーカー(I CTP,BAP,NTx,TRACP-5b)を測定していた104例を用い、骨代謝マーカーの有用性の検討を追加した。さらに、BONENAVIならびに骨代謝マーカー値を用い、多重ロジスティク解析に基づく新規診断モデルを構築した。骨転移の有無は、核医学診断医による骨シンチの読影所見,他の画像診断(CT,MRI,PET-CT,X線など)、骨生検結果、および臨床経過から総合的に診断を行った。
【結果】
骨転移と診断に至った症例は、300例中43例であった。ANN値を用いてROC解析を行ったところ、AUC=0.764,感度83.7%,特異度62.7%であった。骨代謝マーカーについては、104例を用いた多変量解析の結果、I CTPのみが独立した骨転移診断マーカーと考えられた(p<0.0001)。I CTPを用いたROC解析では、AUC=0.776,感度57.1%,特異度86.8% であった。多重ロジスティク解析に基づき、ANNおよびI CTP値から構築した診断モデルは、ROC解析にて,AUC=0.849,感度76.2%,特異度80.7%と高い診断精度を認めた。
【結論】
感度の高いBONENAVIと特異度の高い1CTPを組み合わせることで、精度の高い腎癌骨転移診断モデルを構築することが可能であった。
【目的】2016年に分子標的治療後の進行性腎細胞癌に対して抗PD-1抗体であるニボルマブの適応が承認されたことで、分子標的治療後の進行性腎細胞癌症例の生命予後の正確な予測がより重要になってきている。我々は今までにFDG PET/CTが未治療進行性腎細胞癌の生命予後予測に有用であることを報告してきたが、今回は分子標的治療後の進行性腎細胞癌症例の生命予後が予測可能か検討を行った。
【方法】1次治療としての分子標的治療の終了時点に施行したFDG PET/CTのmax SUVmax (1症例中で最も高値のstandardized uptake value)を基に進行性腎細胞癌患者81例を既報のcut off値である7.0、12.0で3群化しその生命予後を解析した。
【結果】1次治療としてTyrosine Kinase Inhibitorを用いた72例とmTOR阻害剤を用いた9例の合計81例を対象とした。全症例の全生存期間(OS)は20.4ヶ月(95%CI 13.8-27.0)、max SUVmax中央値は7.1(測定不可-23.0)。max SUVmaxが7.0未満のgood risk症例は39例(48%)でOS中央値は32.8ヶ月、7.0以上12.0未満のintermediate risk症例は30例(37%)でOS中央値は15.2ヶ月、12.0以上のpoor risk症例は12例(15%)でOS中央値は6.0ヶ月で3群間に有意差を認めた(log rank検定:good risk vs. intermediate risk P=0.0333、intermediate risk vs. poor risk P=0.0235)。
【結語】FDG PET/CTによる生命予後予測は未治療症例に限らず、1次治療終了症例に対しても有用であり、2次治療の選択肢が拡がった現在、実臨床において積極的に活用していく評価法と考えられた。