インデックスページへ戻る

肝胆膵

癌幹細胞様細胞における抗癌剤耐性に影響を及ぼす遺伝子の同定

best
演  者:
恒富 亮一1、吉村 清2、松隈 聰1、兼清 信介1、友近 忍1、徳久 善弘1、飯田 通久1
坂本 和彦1、鈴木 伸明1、武田 茂1、山本 滋1、吉野 茂文3、硲 彰一4、上野 富雄5、永野 浩昭1
所属機関:
1山口大学・大学院医学系研究科・消化器・腫瘍外科学、2国立研究開発法人国立がん研究センター・免疫療法開発分野、3山口大学・医学部附属病院・腫瘍センター、4山口大学・医学部・先端がん治療開発学、5川崎医科大学・医学部・消化器外科

【背景】肝細胞癌 (HCC) において、肝内転移による術後早期再発は予後不良の一因である。近年、癌細胞は可塑性を有し、上皮間葉系移行 (EMT) を介して癌細胞から転移や治療抵抗性に寄与する癌幹細胞様細胞の発生が報告されている。これまでに、神経生存因子を含むことを特徴とする培地を用いることでヒトHCC細胞株より癌幹細胞様Sphere細胞の誘導に成功している。
【方法】肝転移能は免疫不全マウスへの脾臓注入による経門脈的肝転移モデルにより評価した。抗癌剤耐性能はMTSアッセイにより評価した。網羅的発現解析にはNextSeq 500を用いてのRNA-seqを行った。siRNAの移入により遺伝子ノックダウンを行った。
【結果】低分化型肝細胞癌由来SK-HEP-1より誘導したSphere細胞 (SK-sphere) は、肝転移モデルにおいて、親株であるSK-HEP-1と比較して有意な肝転移能の亢進が見られた。また、SK-sphereは種々の抗癌剤に対してSK-HEP-1よりも有意に高い耐性を示した。RNA-seqによるmRNA発現解析について、Gene Set Enrichment解析を行った結果、SK-sphereは親株と比較して、HypoxiaとEMTの有意なenrichmentが見られた。Hypoxiaについては、Sphere細胞における細胞内ROS産生抑制が観察された。また、Vimentin, Snail, HMGA2の発現上昇とlet-7a-5p microRNAのSphere細胞における発現低下が観察された。さらに、手術摘出凍結標本からのRNAを用いて、術後肝内早期再発の有無に関するRNA-seq解析と、SK-sphereでのRNA-seq解析とを統合解析した結果、早期肝内再発群およびSK-sphereに共通して発現亢進を示す遺伝子としてsmall GTPaseをコードする遺伝子Aを同定した。この遺伝子Aの発現をノックダウンすることにより、Sphere細胞から接着細胞への変換が観察された。さらに、遺伝子Aノックダウン株は、Sphere誘導培地におけるドキソルビシンやドセタキセルにおける耐性の減弱が見られた。
【結論】癌幹細胞特性、特に抗癌剤耐性に関与する遺伝子の同定が示唆された。


外科的切除を行った膵神経内分泌腫瘍の解析

演  者:
神谷 真梨子1、山本 直人1、井上 広英1、渥美 陽介1、大島 貴2、湯川 寛夫2、利野 靖2、益田 宗孝2、森永 聡一郎1
所属機関:
1地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター・消化器外科、2横浜市立大学・外科治療学

【背景】膵神経内分泌腫瘍(P-NET)は稀な疾患であるが, 近年は画像診断の向上により, 腫瘍径の小さなものでも発見される機会が多くなっている. NETの腫瘍径と悪性度が相関するとの報告があるが, NCCNガイドラインでは治癒切除可能なP-NETはすべて外科的切除術が推奨されている.
【対象と方法】2010年8月から2016年12月まで当院でR0またはR1の手術を施行したP-NET 24例(NECを除く)を対象とし, その背景因子, 病理学的所見, 術後成績を後ろ向きに解析した.
【成績】性別は男性3例, 女性21例, 年齢の中央値は62.5歳(Range:37-75歳). 腫瘍の局在は膵頭部8例, 膵体部11例, 膵尾部5例で, 術式は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が8例, 膵体尾部切除術が16例に施行された. 1例が機能性インスリノーマで, それ以外は非機能性腫瘍であった. 非機能性腫瘍で免疫染色を行った8例のうち, セロトニン陽性が4例, グルカゴン陽性が3例, インスリン陽性が1例であった. また, セロトニン陽性の3例では, 術前の画像診断で主膵管の閉塞を認めた. 病理組織学的Grade(WHO分類)はG1が14例, G2が10例であった. 腫瘍径の中央値は20mm(6.5-105mm), G1では15mm(6.5-70mm), G2では35mm(16-105mm)であり, G1で有意に腫瘍径が小さかった(p=0.02). リンパ節転移を8例(G1:3例, G2:5例)に認め, 転移ありの腫瘍径の中央値は48mm(15-105mm), 転移なしでは16.5mm(6.5-60mm)で, 腫瘍径が大きいものほど有意にリンパ節転移を認めた(p=0.008). 一方で腫瘍径20mm以下の小さなG1症例2例にもリンパ節転移を認めた. リンパ節転移の有無とG1/2の関連は認めなかった(p=0.41). 術後経過は, G1で腫瘍径が大きかった2例に肝転移再発を認め, 1例はその後死亡した. それ以外のG1の12例では再発を認めていない. G2は6例に肝転移再発を認め, 2例死亡, 4例は現在も化学療法継続中である. G1/2に関わらず, 腫瘍径の大きいものほど, 有意に再発率, 死亡率が高かった(p=0.0002 / p=0.02).
【結語】治癒切除可能なP-NET症例においては, 腫瘍径の大きいものほどリンパ節転移を認め, 再発率, 死亡率が高かった. しかし, 腫瘍径が20mm以下の症例の中にもリンパ節転移を認めるものはあり, そのような症例においても, リンパ節郭清を伴う手術手技や, 慎重な経過観察が必要と考えられた.


原発性肝癌におけるMob1発現異常の役割とその臨床的意義

演  者:
杉町 圭史1、西尾 美希3、井口 友宏1、森田 勝1、鈴木 聡3、三森 功士2
所属機関:
1独立行政法人国立病院機構九州がんセンター・肝胆膵外科、2九州大学・別府病院・外科、3神戸大学・大学院医学研究科・分子細胞生物学

【背景】Hippo経路は細胞増殖、幹細胞分化、上皮間葉転換などにより器官形成・サイズ、がん発症・進展を制御するシグナル伝達系である。そのkey componentであるYAP1は細胞増殖を促進し、MOB1はYAP1の機能抑制を来す。我々は肝臓特異的Mob1欠損マウスにおいて生後早期から未熟胆管細胞の過形成がみられ、生後3週間以内に半数以上が致死となり、長期生存すると肝細胞癌(HCC)、肝内胆管癌(ICC)や混合型肝癌(cHC-CC)が全例に発症することを見出し、MOB1はTGFβ経路と共同して肝発癌に重要な役割を果たすことを報告した。今回、ヒト原発性肝癌におけるMOB1、YAP1の発現異常の臨床的意義を検討した。
【方法】(1)HCC、ICC、cHC-CC切除各30症例、および非癌肝細胞、胆管上皮細胞においてYAP1、SMAD2の発現を免疫組織学的に検討した。(2)1990-2015年に行ったICC初回肝切除88症例を対象としてMOB1、YAP1、SMAD2の発現を免疫組織学的に検討して各分子の発現と臨床病理学的因子の相関を統計学的に解析した。標本中の染色陽性領域と染色強度の2項目によってスコアリングし、タンパク発現のgradeを決定した。
【結果】YAP1の核内強発現は非癌細胞と比較して癌で有意に高かった。発現強度はcHC-CC>ICC>HCCであり分化が低い癌で発現が有意に高かった。YAP1核内強発現28例(31.8%)に認められ、YAP1強発現群は有意に予後が不良であった(p=0.01)。一方MOB1発現は42例(47.7%)で低下しており、MOB1低発現群は有意に予後が不良であった(p=0.02)。サブグループ解析ではYAP1低発現かつMOB1高発現群が有意に予後良好であった。またYAP1強発現はSMAD2の核内発現と有意に相関し共役して核内で機能していることが示唆された。多変量解析においてYAP1強発現(p<0.01)、MOB1低発現(p<0.01)、リンパ管侵襲(p<0.01)が生存の独立危険因子であった。
【結語】Hippo経路のコンポーネントであるYAP1、MOB1の異常が肝癌の発生と悪性度に寄与しており、重要なバイオマーカーや治療標的となることが示唆された。


膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)術後の残膵病変発生のリスクとサーベイランス

演  者:
畠 達夫1、水間 正道1、伊関 雅裕1、高舘 達之1、大塚 英郎1、坂田 直昭1、中川 圭1、森川 孝則1
林 洋毅1、内藤 剛1、元井 冬彦1、海野 倫明1
所属機関:
1東北大学・大学院医学系研究科・消化器外科学

【背景】膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)は多中心性病変や浸潤性膵管癌(PDAC)が同時性・異時性に起こりうるという特徴を有するため、術後の残膵病変の発生を念頭に置いたサーベイランスが求められる。しかし、残膵病変発生の危険因子や初回術後のサーベイランス法については一定の見解は得られていない。【目的】膵IPMNの残膵病変の危険因子を検討し、至適な術後サーベイランス法を明らかにする。【対象と方法】1988年から2015年まで当科で切除した膵IPMN209例中、膵全摘27例(他院で初回手術施行後の残膵全摘4例を含む)を除いた182例(男性120例、女性62例)を対象とした。残膵病変(IPMNとPDACを含む)発生例と非発生例の臨床病理学的特徴を比較した。また、残膵病変発生までの期間、治療法、予後について検討した。【結果】初回切除時のIPMNは分枝型132例、主膵管型50例で、術式は膵頭十二指腸切除114例、尾側膵切除(DP)63例、その他縮小手術5例であった。病理組織所見はlow-grade dysplasia(LGD)71例、high-grade dysplasia (HGD)65例、由来浸潤癌46例で、初回術後からの観察期間中央値は50.4ヶ月であった。異時性の残膵病変は13例に認め、初回術後から残膵病変発生までの期間は中央値で39.6ヶ月であった。初回手術から10年以上経過後の晩期発生を2例(160ヶ月と173ヶ月)に認め、累積発生率は26.8%であった。多変量解析の結果、残膵発生は初回手術DP例(オッズ比3.40, 95%信頼区間1.01-12.5, p=0.049)で有意に高リスクであり、また初回手術時の組織亜型がgastric typeの症例(オッズ比0.23, 95%信頼区間0.05-0.83, p=0.023)で有意に低リスクであった。初回手術時の組織異型度や膵断端所見は残膵発生のリスクとして選択されなかった。残膵発生13例中8例に残膵切除が施行され、組織型はPDAC2例、HGD3例、由来浸潤癌3例で、初回手術と同等以上の異型度であった。原病死1例、他病死1例を除く6例は無再発生存中であり、残膵切除例は非切除となった5例(局所進行1例、他臓器転移3例、併存症と高齢による1例)と比べ有意に予後良好であった(P<0.003)。【結語】IPMNに対してDPを施行し、gastric type以外の組織亜型を認めた症例については、特に残膵発生を念頭に置いたサーベイランスが重要である。また、術後晩期に発生する例もあり、残膵切除により予後の延長も期待できることから長期のフォローアップが必要である。