【目的】
喫煙や肥満などの生活習慣因子は多くのがんの発症要因の一つとして挙げられている。近年、骨・軟部肉腫の発症と遺伝子異常との関連が解明されてきているが、生活習慣因子との関連についての詳細な報告は少ない。今回単一施設における骨・軟部肉腫患者における生活習慣因子とその関連について調査した。
【対象と方法】
2006年1月から2013年12月までに受診した骨・軟部肉腫患者のうち、初診時アンケートから生活習慣に関する回答を得られた1354人(骨276人、軟部1078人、男性754人、女性600人、平均年齢48歳(1~92歳))を対象とした。厚生労働省の国民健康栄養調査データ(平成26年度版)から性別・年齢をマッチングさせた1354人を比較対照群(以下、control群)として引用し、肉腫の各組織別に喫煙、飲酒、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症との関連について比較検討した。各因子のOdds比及びFisher's exact testにて有意差を算出した(p<0.05)。また家族のがん既往歴、自身のがん既往歴について調査した。
【結果】
骨・軟部肉腫患者の喫煙歴はcontrol群と比較してOdds比1.83(95%CI:1.53,2.19)、p<0.01と有意差を認めた。またcontrol群の平均喫煙率(男性32.2%、女性8.5%)と比較し、男性の軟部肉腫全体の喫煙率は47%(279/594人)と比較的高く、さらに脂肪肉腫及び分類不能型多型肉腫において各々58%(96/166人)、53%(62/117人)と高値を示した。一方、肥満、飲酒歴、高血圧、糖尿病、高脂血症と骨・軟部肉腫との明らかな関連は認められなかった。また第2親等までの家族のがん既往歴は骨・軟部肉腫ともに約半数(骨46%、軟部49%)に認められ、組織別(n=20人以上)では、MPNST64%(16/25人)、滑膜肉腫57%(31/54人)、平滑筋肉腫56%(32/57人)であった。がん種は胃癌>肺癌>大腸癌の順で多かった。一方、自身のがん既往歴は10%未満であった。
【考察】
骨・軟部肉腫と喫煙との関連について報告した文献は少なく、2004年のWHOの国際がん研究機関の報告においても軟部肉腫と喫煙の関連について明言していない。家族のがん既往歴は骨・軟部肉腫の約35-69%に関連があると報告されており、今回の結果もそれに合致していた。
【結語】
喫煙の曝露は骨・軟部肉腫、特に男性の脂肪肉腫や未分化多型肉腫の発症に関与している可能性がある。また第2親等までの家族のがん既往歴、特に胃癌・肺癌の既往歴は骨・軟部肉腫の発症と関連している可能性がある。
【目的】
悪性軟部腫瘍に代表される各希少がんの頻度はがん全体の1%以下に過ぎないが, 全希少がんが占める頻度の合計は約15-20%とされ, 必ずしも希少ではない. 現在, 我々の研究班では統計学的デザインにベイズ法を用いた希少がんに対する複数の医師主導治験を実施・計画している. これらの研究の目的は, 将来的に医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協力の上で, 製薬企業から希少がんに対する薬剤の新規承認申請が行われること, ならびにベイズ法を用いた薬剤開発プラットフォームを開発することである. また同時に, 日本における希少がんの治療開発に関する基盤整備を実施することで, その魅力を世界へ発信することも目的としている.
【方法】
我々は日本医療研究開発機構(AMED)の資金により, 希少がんに対する治療開発とその基盤整備, ならびにトランスレーショナルリサーチの実施に関する研究チームを立ち上げた. 具体的な研究内容としては, 希少がん患者のレジストリーデータベースの構築とその利用, 臨床試験グループの設置, 希少がん患者検体由来のxenograftマウスモデルを用いたトランスレーショナルリサーチの標準化などが挙げられる.
【結果】
2016年11月より, 明細胞肉腫および胞巣状軟部肉腫を対象にニボルマブを用いた医師主導治験(OSCAR trial)を開始した(UMIN000023665). また2017年中には子宮癌肉腫を対象に新規の薬剤を用いる医師主導治験(STATICE trial)も開始する予定としており, 悪性軟部腫瘍を中心とした希少がんの治療開発に注力している.
【考察および結論】
明細胞肉腫や胞巣状軟部肉腫などの悪性軟部腫瘍や、特殊な組織型とされる子宮癌肉腫などに代表される希少がんは, その希少性と市場規模の問題により, 製薬企業主導による新規薬剤開発は期待し難い状況にある. こうした状況のなか, 2012年の第二期 "がん対策推進基本計画" において, 希少がんはがん医療の個別目標の一つとして設定された. こうした国策も受け, 我々は医師主導治験を軸としながら, PMDA, AMED, academiaといった産官学が協力できる体制整備とともに希少がんに対する治療開発基盤の整備を進め, 希少がん患者の抱えるアンメットメディカルニーズに対応していかなければならない.