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肝胆膵

肝外転移並存大腸癌肝転移に対する外科治療の意義

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演  者:
野尻 和典
所属機関:
横浜市立大学消化器・腫瘍外科

【目的】肝外転移並存大腸癌肝転移の切除成績・予後因子を解析し外科的切除の意義を明らかにする.【対象】1992年から2012年までの肝転移切除457例を対象とした。このうち肝外転移並存例は84例(18.4%)であり、57例(12.5%)では肝・肝外転移ともに切除し、27例(5.9%)では肝転移のみ切除した。【結果】全例(n= 457)の5年生存率は51.1%、5年無再発生存率は27.0%で、肝外転移並存84例ではそれぞれ21.0%、13.8%であった。肝外転移部位は肺44例(46.3%)、リンパ節21例(22.1%)、腹膜15例(15.8%)、原発巣局所再発7例(7.4%)、副腎3例(3.2%)、脾2例(2.1%)、骨、膀胱、ポートサイトがそれぞれ1例(1.1%)であった。1)単変量解析での肝外転移並存84例の予後因子は、肝転移個数3個以下、肝転移巣最大径50mm未満、肝切除断端陰性、肝外転移根治切除が抽出され多変量解析では肝切除断端陰性(Hazard比2.075、p= 0.02)、肝外転移根治切除(Hazard比1.67、p= 0.04)が予後規定因子であった。2)肝転移、肝外転移ともに根治切除した57例の予後因子は単変量解析では、肝転移巣最大径50mm未満、切除断端陰性、肺転移単独、総転移個数(肝及び肝外)4個以下であり、多変量解析では肺転移単独(Hazard比2.560 、p= 0.001)、総転移個数4個以下(Hazard比2.574、 p= 0.001)であった。3)肝切除のみで肝外転移非切除の27例(肝切除群)を同時期の化学療法のみ施行した肝外転移並存肝転移39例(化学療法群)と比較すると、背景因子には差がみられなかった。肝切除群の長期成績は1年生存率60.9%、3年生存率20.0%、生存期間中央値:21ヶ月と、化学療法群(それぞれ56.8%、7.2%、12ヶ月)(p= 0.08)に比較し良好であった。肝切除群の3年以上生存例では肝転移個数4個以下のものが多かった。【結語】肝外転移並存大腸癌肝転移は、肝・肝外ともに根治切除可能な症例で特に肺単独転移あるいは肝・肝外の総転移個数が4個以下のものは切除の良い適応である。一方で肝転移切除のみで肝外転移の治癒切除が困難な場合でも、化学療法単独より長期生存が期待でき、積極的に肝切除を考慮すべきと考えられた。


大腸癌肝限局性転移に対する術前化学療法における 切除可否に関する画像評価の検討

演  者:
高槻 光寿
所属機関:
長崎大院移植・消化器外科

背景 Kyushu Study group of Clinical Cancer (KSCC)では、H2およびH3の大腸癌肝限局性転移に対する術前化学療法としてmFOLFOX6 + bevacizumabによる第II相臨床試験(KSCC0802)を実施し、昨年の本学会で有効性と安全性を報告した。今回、複数の肝臓外科医による中央判定会を実施し、切除可否を評価した。方法 36例を対象とし、異なる施設の肝臓外科医5名により、互いの評価をブラインドして、1.治癒的切除可能、2.探索的切除可能、3.化学療法優先例(切除は難しいが、化学療法を先行することにより切除可となる可能性がある)、4.切除不能、5.評価不能の5段階で判定を実施、5名のうち50%以上が1.および2.を選択した場合を切除可能例と評価した。結果 化学療法実施前では切除可能13例(36.1%)、切除不能23例であり、化学療法実施後では切除可能17例(47.2%)、切除不能19例であった。結語 本判定法は、CELIM試験(Lancet Oncol 2010)で報告され、信頼性の高い手法とされているが、本邦においては同様の報告はないため、KSCCにて実施した。その結果、術前化学療法を施行することにより、切除可能割合が増加した 。


切除可能胆管癌に対する術前化学放射線療法 -II相試験中間解析の結果

演  者:
片寄 友
所属機関:
東北大学大学院医学系研究科 統合癌治療外科

【目的】胆管癌は、局所制御により予後向上を図れる癌であるが、腫瘍の近傍には肝動脈あるいは門脈、さらには肝および膵が隣接し、宿主側因子の面から根治切除が困難な場合がある。そこで、われわれは局所の制御を目的として放射線療法に期待して、切除企図症例に対して術前化学放射線療法(Neoadjuvant chemoradiation therapy for cholangiocarcinoma:以下NACRAC) を施行している。今回われわれは、現在施行中のII相試験の中間解析から、NACRACの安全性を検討し、その効果に対してほぼ同時期の症例を比較検討した。【方法と対象】NACRACのレジメは、体外照射を45Gyと塩酸ゲムシタビン(600mg/m2)である。II相試験は2008年より施行されており、主要評価項目は組織学的根治度、副次的評価項目は、安全性や組織学的効果などとした。今回の対象はNACRAC群22例であり、比較対象とした症例は2008年1月より術前治療を施行せず手術企図され開腹した156例とし、そのうち141例が切除された。【結果】NACRAC群で17例切除され(4例非切除)、対象群では141例(15例試験開腹)が切除された。周術期因子として出血量、手術時間、術後在院日数を中央値で検討すると、NACRAC群ではそれぞれ1426ml、618分、30日で、対象群はそれぞれ1486ml、622分、31日で、両群に差は無かった。また、術後の合併症として肝不全、Surgical Site infection(SSI)、胆管空腸縫合不全を検討したが、両群に差は無かった。 1例が術後に膵癌と診断されたため、この1例を除いて非切除4例を含む全21例で主要評価項目のpCurA+Bについて検討するとNACRAC群が13例(13/21例、62%)であった。一方対照群(sStageIII, IVのみ)では36例(36%、)であり有意にNACRAC群が良好であった(p<0.05)。【結語】II相試験中間解析からNACRACは現時点では安全と考えられ、組織学的治癒率は向上しており試験継続と判断した。今後、再発率の結果を踏まえ集学的治療としての術前化学放射線療法の位置付けを考えていく予定である。TRIAL REGISTRATION: UMIN Clinical Trials Registry (UMIN-CTR) UMIN UMIN000000992 and UMIN000001754


局所進行膵癌に対するTS-1併用化学放射線療法の治療成績-第2・3相臨床試験-

演  者:
新地 洋之
所属機関:
鹿児島大学医学部保健学科外科分野

【目的】切除不能膵癌に対する新しい治療法として,TS-1併用加速過分割放射線療法を試みており,その有効性および安全性について第2相,3相臨床試験の結果を報告する。【方法】審査腹腔鏡検査により,遠隔転移のない局所進行切除不能膵癌50例を対象としたTS-1併用化学放射線療法第2相臨床試験を施行した。さらに,TS-1併用放射線化学療法の優越性の有無を検証するために,TS-1単独化学療法とのランダム化比較第3相臨床試験を行った。体外放射線は1回1.25Gyを朝夕2回の2.5Gy/日,週5日間で4週間,計50Gy施行。TS-1は80mg/m2/日(分2)を3週間投与。維持化学療法として,TS-1 80mg/m2/日を2週投与,2週休薬として,1年間継続投与した。【結果】第2相試験の結果,抗腫瘍効果はPR 15例,SD 23例で,奏効率30%,病勢制御率76%(38/50例)であった。生存期間中央値 (MST) は14.3カ月(5.4-72カ月),1年生存率 は62%,2年生存率は28%,5年生存率は7%。3年以上の生存例を7例,5年以上の長期生存例を2例認めた。2例に著明な腫瘍縮小を認め,化学放射線治療終了後各々3カ月,11カ月に外科的に根治切除しえた。前者は切除後27カ月に腹膜再発にて死亡,後者は切除後38カ月無再発生存中である。第3相試験の結果,TS-1併用放射線化学療法群17例のMSTは19.7カ月,1年生存率 79%,2年生存率30%に対して,TS-1単独化学療法群17例のMSTは12.5カ月,1年生存率 は58%,2年生存率は10%であり,TS-1併用放射線化学療法群がTS-1単独化学療法群に比べ,生存期間が良好であった。両群ともにGrade 4以上の重篤な有害事象を認めなかった。【考察】膵癌に対するTS-1併用化学放射線療法は忍容性が良好で,有効な治療法であることが示唆された。今後,TS-1併用化学放射線療法を主体とした集学治療が期待できる。


化学療法未治療の遠隔転移を有する膵癌に対するFOLFIRINOX併用療法の第II相臨床試験

演  者:
池田 公史
所属機関:
国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科

[背景・目的]フランスで実施されたACCORD 11試験の結果、化学療法未治療の遠隔転移を有する膵癌(MPC)に対して、FOLFIRINOX療法がGEM単剤療法に比べてOS及びPFSを有意に改善することが報告された。本邦におけるFOLFIRINOX療法の有効性及び安全性を確認することを目的に化学療法未治療のMPCに対するFOLFIRINOX療法の第II相臨床試験を実施した。[対象] 化学療法未治療のMPCであり、腺癌または腺扁平上皮癌であることが病理学的に確認され、PSは0-1、十分な骨髄、肝及び腎機能を有する20-75歳の症例を対象とした。なお、UGT1A1*6、UGT1A1*28のいずれかがホモ接合体またはいずれもヘテロ接合体の症例は除外した。[方法]FOLFIRINOX療法は、Day1にL-OHP 85 mg/m2、l-LV 200 mg/m2、CPT-11 180 mg/m2を点滴静注し、その後、5-FU 400 mg/m2をbolus投与、Day1からDay3にかけて5-FU 2400 mg/m2を持続静注し、Day3~15までを休薬する。これを1サイクル(Cy)とし中止基準に該当するまで投与を繰り返した。主要評価項目は奏効率(RR)とした。[結果]2011月6月~2012年9月の間に36例が登録された。最終の症例登録から6ヵ月後にデータをカットオフし、中間解析を行った。患者背景は、年齢中央値61.5(27~71)歳、男/女:24/12、PS0/1:21/15、原発巣を膵頭部に有する症例は7例、登録時の胆管ステント留置例は6例であった。投与Cy中央値は8(1-18) Cy、 L-OHP、CPT-11、5-FU(bolus)、5-FU(持続静注)の相対投薬強度中央値はそれぞれ71.8%、71.1%、15.9%、80.3%であった。RRは38.9%(95%CI:42.0-77.0)、PFS中央値は5.6ヵ月(3.0-7.8)であった。Grade 3以上の主な有害事象は、好中球数減少が77.8%、発熱性好中球減少症が22.2%、血小板数減少、貧血がそれぞれ11.1%、悪心、下痢が8.3%に認められた。治療関連死は認められなかった。[結語]本邦におけるFOLFIRINOX療法は、化学療法未治療のMPCに対して、ACCORD 11試験と同様の良好な有効性を示した。ACCORD 11試験に比べ、Grade3以上の骨髄抑制に関連する有害事象が高頻度で認められたが、適切な症例選択と延期・減量により管理可能であった。FOLFIRINOX療法は日本人膵癌患者に対しても治療効果を有し、本試験の登録基準を満たすMPC患者に対し1st lineの標準療法になり得ることが示唆された。


進行膵癌に対するエルロチニブ併用ゲムシタビン療法の治療成績-東病院での検討-

演  者:
桑原 明子
所属機関:
国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科

【背景】欧米で行われた第III相臨床試験(Moore, 2007)において,エルロチニブ併用ゲムシタビン療法はゲムシタビン療法と比較して有意に生存期間を延長し,ゲムシタビン療法と並んで切除不能膵がんに対する標準治療の1つに位置づけられた.しかし,生存期間の延長は限られており,比較的高頻度の有害事象が報告されたことから,国内においてはあまり浸透していないのが現状である.今回われわれは,当院におけるエルロチニブ併用ゲムシタビン療法の安全性及び有効性について検討した.【方法】当院で2011年8月~2012年12月に病理学的に診断された進行再発膵がんに対してエルロチニブ併用ゲムシタビン療法を開始した98例のうち,一次治療として上記化学療法を行った86例を対象とし,安全性及び有効性を後方視的に検討した.【結果】患者背景は,年齢中央値(範囲):67歳(34-86歳),男/女:49/37,喫煙歴あり/喫煙歴なし:35/51,PS 0/1/2:52/29/5,原発部位(膵頭部/膵体部/膵尾部):33/34/19,胆道ドレナージあり/なし:22/64,術後再発/局所進行/遠隔転移:5/18/63,CEA中央値(範囲)4.75(0.4-255.7)ng/mL,CA19-9中央値(範囲)752(0.1-453000)U/mLであった.頻度の高い有害事象はざ瘡様皮疹,悪心,食欲不振,疲労であり,薬剤性肺障害を3例(3.4%,Grade1:2例,Grade3:1例)に認めたものの,致死的な有害事象は認めなかった.また,奏効割合は7.0%,病勢制御割合(6週以上)は72%であり,無増悪生存期間の中央値(95%信頼区間)は168(124-220)日であった.【結語】エルロチニブ併用ゲムシタビン療法は忍容性,有効性ともに良好であった.


切除不能膵癌に対する化学療法・放射線療法後の補助的切除の意義

演  者:
元井 冬彦
所属機関:
東北大病 肝胆膵外科

[背景]切除不能膵癌に対しては、化学療法・放射線療法(CRT)が行なわれるが、近年一部の奏功例に対して切除(Adjuvant surgery)を行なう報告が散見される。[目的]当施設で行なわれたadjuvant surgeryの成績を検討する。[対象]2007年以降に当科でAdjuvant Surgeryを行なった15例。[方法]後ろ向き検討。カルテ・データベースより、切除前治療の期間・効果と生存期間を検討した。[結果]年齢中央値63歳(47-75)、男性11例:女性4例、頭部9例:体尾部6例。切除不能理由は、局所進行13例(全例が半周以上の主要動脈接触)、遠隔転移2例(肝)であった。治療は、CRT10例、化学療法(GS療法)8例(うち両者の逐次が3例)であり、治療後手術までの期間中央値は98日(44-341日)であった。画像上の治療効果は1例がRECIST基準で部分奏効であったものの、他は不変であった。治療前CA19-9値が上昇していた12例(中央値209 U/ml:43.5-1134100 U/ml)中、11例で低下(減少率-20〜99.9%:中央値66%)し、前後でPET-CTを撮像した3例全例でSUVmax値の低下を認めていた。病巣摘除に必要な膵切除に加え、門脈合併切除を7例、腹腔動脈幹合併切除を5例施行し、手術時間は529分、出血量は1250ml(各中央値)であった。術後在院日数は23.5日(中央値)で周術期死亡はなかった。生存期間中央値は26.5ヶ月、無再発生存期間中央値は10.7ヶ月であった。R0切除率は92%(R0かつマーカー正常化率は70%)、N0率は50%であった。組織学的治療効果は評価可能12例中5例(42%)で、Evans分類のGrade IIB/IIIであった。[考察]Adjuvant surgeryは、化学療法などで選別された症例に対して施行された場合に、一定の安全性を持って施行可能であり、生存期間延長効果を持つ可能性が示唆された。今後予後因子による適格症例の選択、治療期間・治療法を明らかにするために、前向きに症例を集積すべきと考えられた。