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大腸

大腸癌におけるDICER1mRNA発現の予後予測因子としての有用性

演  者:
飯沼 久恵
所属機関:
帝京大学 外科

【目的】DICER1はRNase III核酸分解酵素ファミリーの一種であり、microRNAを切断しRISCでの機能発現を促すことが知られている。今回我々は、大腸癌組織におけるDICER1 mRNA発現の臨床病理学的因子および予後との関連性を検討した。【対象と方法】大腸癌症例260例を対象とした。観察期間中央値は45ヶ月である。手術時に癌原発部と正常組織を採取し、マイクロダイセクション法にて組織を切り出した。RNA抽出はRNeasy Mini Kitを用いた。DICER1 mRNAと内部標準遺伝子GAPDH mRNAの発現は、Real-time RT-PCR法で測定した。【結果】大腸癌組織のDICER1 mRNAの発現は、同一症例の正常組織に比較して有意に低下した。臨床病理学的因子との関連性において、DICER1mRNAの発現は腫瘍径、深達度、リンパ節転移、リンパ管侵襲およびDukes stageと有意な関連性を示した。またKaplan-Meier法により、DICER1 mRNA高発現群と低発現群で無病生存期間 (DFS)と全生存期間(OS)を比較検討した結果、DICER1 mRNA低発現群は高発現群に比較してDFSおよびOSが有意に低下した。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析において、DICER1 mRNAの発現はDFSおよびOSに対し有意差を示した。【結語】大腸癌原発部組織におけるDICER1 mRNAの発現は、独立した再発および予後予測因子であることが判明した。


cStage4大腸がんに対する治療戦略 -原発巣切除のタイミング-

演  者:
岩本 慈能
所属機関:
関西医大 外科

[はじめに] cStage4大腸がんでは原発巣切除あるいは人工肛門造設のいずれかを行い化学療法となる。われわれはこれまで化学療法先行が必要であると判断した症例は原発巣切除に拘らず、すみやかに化学療法に移行させる方針で治療を行ってきたので報告する。 [症例]2007/9から2012/12までに進行・再発結腸直腸がんに対し1次治療としてL-OHP Based+Bevacizumab / Cetuximab/ Panitumumab療法を行った症例は176例であった。176例中原発巣を切除せず化学療法をおこなったのは49例(化学療法先行例)で効果判定後、切除が可能と判断された40例(切除例)に対し原発巣切除を行った。[結果]併用された分子標的薬はBevacizumab (34例)/ Cetuximab (8例)/ Panitumumab(7例)であった。化学療法先行例で治療前に大腸がんイレウスにて人工肛門を造設した症例は26例(53.1%)であった。原発巣以外の評価可能病変は肝24例(49.0%),肺6例(12.2%), 遠隔リンパ節15例(30.6%)であった。奏功率はPR/NC/PD 33例/12例/4例であった(RR:67.3%)。PR, NCの40例(81.6%)に対し原発巣切除をおこなった。切除原発巣における組織学的効果はG1a/G1b/G2/G3:15/16/7/2例であった。合併症は化学療法中の穿孔、イレウスがそれぞれ1例、また原発巣切除後の合併症は縫合不全3例、SSI6例、イレウス2例であった。【考察】原発巣・転移巣ともに制御を要する症例では原発巣においてもR0困難例もふくまれていると考えられ、人工肛門造設後、全身化学療法をおこない奏功例では原発巣切除を行うという戦略は局所制御とQOLの改善の双方に寄与する可能性があると思われた。また切除された原発巣の18.4%の症例でG2/3の組織学的効果が得られているが、直腸がんの術前放射線化学療法のpRRが 67.3%(G2/3: 当院データ)と比較するとややunder powerであると思われた。【まとめ】根治切除不能と思われるStage4患者の治療の目的は生存期間の延長とQOLの維持・改善であると考えられ、患者の状況に応じて治療法を選択すべきであると考えられた。


大腸癌補助化学療法アンケート調査-オキサリプラチンのリスクベネフィットバランス

演  者:
谷口 浩也
所属機関:
愛知県がんセ中央病 薬物療法部

【背景】Stage III大腸癌術後補助化学療法(補化療)としてのFOLFOX/CapeOX療法(Ox)は5FU+LVと比較し再発リスクを相対的に約20%低下させることが示されている。本邦ガイドラインではUFT+LV(UL)、Capecitabine(C)も推奨され、UL・CとS-1(S)の比較試験が行われている。【目的】補化療を受けた大腸癌生存者のQOLと副作用の程度、医療者の意識との違いを明らかにし、Oxのリスクベネフィットバランスを考察する。【対象と方法】補化療を受け再発を認めない大腸癌患者(Pt)、化学療法に携わる医師(Dr)・看護師(Ns)を対象に匿名自記式アンケートを実施。評価項目は、Ptへ(1)現在のQOL(EQ5D)、(2)現在の感覚性末梢神経障害(CTCAE、FACT/GOG Oxaliplatin Specific Neurotoxicity質問票(NTX-12))、(3)実際に受けた補化療時の副作用(各副作用・総合評価を3段階評価)。医療者へは(4)普段治療に携わっている中でOx, S, Cが副作用強, 中, 弱のいずれに該当すると思うかを質問した。【結果】Ptは当院患者144人 (回収率86%)、Dr 4施設54人、Ns 4施設84人から回答を得た。Ptは年齢中央値61歳, Stage II/III/IV 6/127/11, 術後からの経過期間中央値2.8年, 補化療レジメン UL/C/S/Ox/他 25/39/31/26/23。Pt(1)-EQ5D平均値は、Ox群0.877, UL群0.963, C群0.968, S群0.941とOx群はC群・UL群と比較してやや低値であるが全体に良好。(2)-CTCAE Gr1・2割合はOx群65%, UL群4%, C群13%, S群19%、NTX-12平均値はOx群 8.2, UL群1.3, C群1.5, S群2.1とOx群で不良。(3)-副作用強・中と回答したPtの割合は、手足症候群はC群(56%)、しびれはOx群(88%)が高く、食欲不振/悪心はUL群(21%/17%)やC群(33%/28%)と比較してS群(52%/48%)で高い傾向。総合評価として、副作用強/中/弱と回答したPtの割合はそれぞれOx群8%/81%/12%, UL群4%/25%/71%, C群3%/46%/50%, S群23%/57%/20%であり、副作用の強さは概ねOx=S, C, Uの順。(4)一方で、医療者の評価は、Oxを副作用強/中と回答したのはDrの39%/60%, Nsの43%/52%、C, Sを副作用中と回答したのはDrの74%, Nsの84%であり、Ptの回答と乖離があった。【結論】Oxを受けたPtは、81%が全体の副作用を中と回答し、感覚性末梢神経障害の残存割合が高いもののQOLは良好であった。Oxによる再発リスク低下への上乗せが約20%であることを考慮すると、補化療におけるOxのリスクベネフィットバランスは許容できると考えられた。


切除不能大腸癌症例における化学療法導入前栄養状態と予後との相関性

演  者:
坂本 快郎
所属機関:
熊大院 消化器外科学

【はじめに】近年、切除不能進行再発大腸癌の予後は、新規抗癌剤や分子標的治療薬の登場により飛躍的に改善している。しかし、化学療法を施行するも、十分な予後の改善が得られない症例も少なくない。【目的】切除不能大腸癌に対して化学療法を行った症例において、化学療法導入前の栄養状態を小野寺のPrognostic Nutrition Indexを用いて評価し、予後との相関性を検討することを目的とした。【対象と方法】2005年4月から2012年12月までに、当院にて一次化学療法を導入した切除不能進行大腸癌98例を対象とした。経過中に転移巣に対して外科的介入を行った症例は除外した。統計解析はChi-square test、Mann-Whitney検定、Log-rank検定、Kaplan-Meier法、Pearsonの相関係数を用いて行った。【結果】年齢中央値は64歳(34〜82歳)、男性60例、女性38例。原発部位は結腸68例、直腸30例で、45例に原発巣切除が行われていた。転移時期は同時性転移74例、異時性転移19例で、局所進行再発を5例含んでいた。一次治療に用いた抗癌剤は、オキサリプラチンベースが91例、イリノテカンベースが7例であった。一次治療において、48例に分子標的治療薬が併用されており、その内訳はベバシズマブ 36例、セツキシマブ 4例、パニツムマブ8例であった。全症例における生存期間中央値は17.4ヶ月であった。98例のPrognostic Nutrition Index中央値は43.9(24.4〜58.5)で、PNIが44未満の49例を低値群、44以上の49例を高値群として両群を比較した。両群間で、年齢、性別、原発部位、転移時期、転移臓器個数、L-OHPの有無、分子標的治療薬の有無において差は認めなかった。原発巣を切除された症例は高値群において有意に多かった。低値群の生存期間中央値は13.6ヶ月、高値群の生存期間中央値は22.2ヶ月で、低値群において有意に予後不良であった(HR 1.58: 1.00-2.63, p=0.049)。また、全症例における生存期間とPNIは正の相関関係を認めた(r=0.29, p=0.004)。【まとめ】切除不能大腸癌症例において、化学療法導入前の栄養状態が予後と相関する可能性が示唆された。


治癒切除不能進行・再発大腸癌に対する初回化学療法のコホート研究(EMERaLD)

演  者:
松岡 宏
所属機関:
藤田保健衛生大学 下部消化管外科

背景本邦における進行・再発大腸癌に対する治療を含む臨床実態を知りうるデータベースは、現在、構築されていない。そこで今回、大腸癌臨床実態のデータベース構築の足がかりとして、進行・再発大腸癌に対する初回化学療法のコホート研究を実施した。 方法治癒切除不能進行・再発大腸癌に対し2010年1月以降に初回治療としてoxaliplatinおよびbevacizumabを含む併用化学療法を施行評価した既存資料(臨床情報)を収集し、初回化学療法の有効性、安全性、及び肝切除率について検討すること、肝切除に関する予後予測因子について検討することを目的とした。主要評価項目は、全生存期間、肝切除率、R0切除率、副次的評価項目は、奏効率、無増悪生存期間、レジメン別、KRAS変異別などのsubgroup別、安全性とした。評価時期は、500例の治療開始6ヶ月経過時、1,000例の治療開始6ヶ月経過時、1,000例の治療開始2年経過時とした。結果2010年10月~2011年9月の間に、日本国内132の資料提供施設から1,353例の既存資料を集積し、今回、1,005例の治療開始6ヶ月経過時の有効性、安全性について中間解析した。1,005例の患者背景は、男/女614/391例、年齢中央値65歳(27-89歳)、ECOG PS 0/1/2/3 854/139/10/2例、占居部位 結腸/直腸/その他549/451/5例、転移再発部位 肝/肺/その他 627/308/421例、bevacizumab併用レジメン FOLFOX/XELOX/その他437/540/28例、KRAS変異(治療開始時)野生/変異/未測定225/168/612例であった。治療開始6ヶ月経過時の有効性は、肝切除率10.5%、R0肝切除率8.9%、奏効率51.6%、6ヶ月PFS率83.9%であった。安全性は、bevacizumab関連のGrade3/4(CTC-AEv3.0)の有害事象 として、高血圧2.4%、蛋白尿0.2%、血栓塞栓症1.1%、出血0.6%、消化管穿孔1.5%であった。また、年齢(75歳未満/以上)別、占居部位別、bevacizumab併用レジメン別、KRAS変異別のサブグループ解析を実施しており、報告する。結語1,005例の治療開始6ヶ月経過時の有効性、安全性を中間解析した。本研究は、本邦における進行・再発大腸癌初回治療の臨床実態を把握する大規模データベースとなり得る。引続き、1,353例の治療開始2年経過時の予後を含む臨床情報を収集し解析する。本研究は、公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターCSPORの資金提供により実施された。


IRIS・IRIS/Bevの有効性比較:2つの独立した第II相試験の比較検討:HGCSG

演  者:
畑中 一映
所属機関:
市立函館病院 消化器内科

背景:切除不能進行・再発結腸直腸癌に対する一次治療としてのIRIS(Irinotecan/S-1:Komatsu Y, et al. Oncology, 2011)と、IRIS/Bev(IRIS/Bevacizumab:Komatsu Y, et al. Acta Oncol, 2012/Yuki S, et al. 2013 ASCO-GI)に関して、第II相試験の結果を報告してきた。北海道消化器癌化学療法研究会で行った、これら2つの独立した試験結果を後方視的に比較検討を行った。
方法:両試験とも組織学的に確定診断のついた切除不能例で、全身化学療法歴のない症例が登録された。IRISはS-1は40-60mg/回を1日2回14 日間内服し、14 日間休薬。Irinotecan 100mg/m2を1 日目・15 日目に点滴静注し、28 日を1 サイクルとして繰り返した。IRIS/BevはIRIS療法の1日目/15日目にBevacizumab 5mg/kgの点滴静注を加えて投与した。両試験の全登録症例を、各因子に対してLog-rank検定を用いて単変量解析を行い、p=0.2以下であった因子に関してCox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行った。
結果:IRIS(n=40)、IRIS/Bev(n=52)の2試験で全92例が登録された。患者背景は両試験間で概ね近似していたが、IRIS/BevにおいてPS良好な症例、転移臓器個数の少ない症例が多く登録されていた。IRIS、IRIS/Bevの生存期間中央値はそれぞれ23.4ヶ月、39.6ヶ月であり、統計学的有意差を認めた(p<0.001)。同様に無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ8.6ヶ月、17.0ヶ月であった(p<0.001)。奏効率に関してはそれぞれ52.5%、63.5%と有意差を認めなかった(p=0.393)。PFS、全生存期間(OS)に関して多変量解析を行ったところ、それぞれBevacizumabの投与有無において有意差を認めた(PFS:HR 0.393(0.235-0.657), p<0.001、OS:HR 0.410(0.237-0.707), p=0.001)。
結語:今回行った後方視的比較検討では、切除不能進行・再発結腸直腸癌の一次治療において、IRIS療法にBevacizumabを加えることでOS/PFSが改善することが示唆された。


高齢者に対する結腸癌術後補助化学療法:ACTS-CC trial年齢別解析

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演  者:
石黒 めぐみ
所属機関:
東京医科歯科大院 応用腫瘍学

背景:ACTS-CC trialは, Stage III結腸癌の術後補助療法としてのS-1療法のUFT+LV療法に対する非劣性を検証するランダム化比較試験である。実地臨床における高齢患者の増加を考慮し, 対象年齢の上限を80歳とした。2009年6月に登録が終了し, 有害事象(Brit J Cancer, 2012)と主要評価項目である登録終了後3年時の無病生存率(ASCO2013, abst#3518)を報告した。今回は, 高齢者における有効性と安全性を検討することを目的に, 年齢群別の解析を行った。方法:解析対象集団1518例(S-1療法760例, UFT+LV療法758例)における臨床病理学的因子, 治療状況, 有害事象, 無病生存期間を, 70歳以下(A群)と71~80歳(B群)の2群に分けて検討した。結果:症例数の内訳はA群69%(1043例), B群31%(475例)で, 病期の分布に差はなかった。B群ではA群に比べPS 1の症例が多く, 右側結腸癌が多い傾向があった。S-1療法における有害事象では, 全grade ではHb低下(A群29%, B群40%), 血小板減少(11%, 16%), 食欲不振(29%, 38%), 疲労(25%, 33%)が, Grade 3以上では食欲不振(3%, 9%), 悪心(1%, 3%), 疲労(2%, 4%)がB群で多かった。UFT+LV療法における有害事象では, 全gradeでは食欲不振(22%, 32%), Hb低下(24%, 33%)はB群で, AST上昇(23%, 14%), ALT上昇(25%, 14%)はA群で多かった。Grade 3以上で差があったのは食欲不振(3%, 6%)のみであった。治療完遂率は, S-1療法でA群78%, B群74%, UFT+LV療法でA群75%, B群71%で, いずれも年齢群間で差はなかった。S-1療法における登録終了後3年時の無病生存率はA群74.7%, B群78.4%, UFT+LV療法ではA群73.3%, B群68.5%であり, 無病生存期間の年齢群間における差はなかった(ログランク検定 p=0.535, p=0.315)。結語:高齢者におけるS-1またはUFT+LVによるStage III結腸癌の補助療法は, 非高齢者に比べ, 忍容性および有効性に差はなかった。


直腸癌に対する術前化学放射線療法の局所制御効果―癌幹細胞マーカー発現程度別解析―

演  者:
神藤 英二
所属機関:
防衛医科大学校 外科

欧米では直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)は局所再発抑制効果が示され、標準治療に位置付けられているが、本邦ではそのエビデンスが乏しい。また、CRTは手術が遅延するのみでなく、術後には骨盤内感染、肛門機能障害などの合併症も報告され、効果予測に基づいた対象症例の選別が重要であるが、コンセンサスの得られた選別法はない。一方、基礎的実験から癌幹細胞は化学療法や放射線療法に対し抵抗性を示すとの報告がある。今回、治療前生検組織を用いて癌幹細胞マーカーを検索し、その発現程度がCRTによる局所制御効果の指標になりうるかについて検討を行った。【対象】治癒切除進行直腸Rb癌139例(CurA・1998-07・観察期間中央値61カ月)。内訳はcT3以深の診断で短期CRT施行(4Gy x5日+UFT400mg x7日)後切除を行った78例(照射例)、およびCRTを実施せず手術を行ったpT3以深の61例(非照射例)。【方法】治療前(照射例はCRT前、非照射例は術前)生検組織に対し、癌幹細胞マーカー(CD133、SOX2、Oct4、c-myc)の免疫染色を施行。カットオフ値をCD133:≧20%、SOX2:≧5%、Oct4:≧7%、c-myc:≧20%とし2種類以上が陽性となる高発現(H)群と、1種類以下の低発現(L)群とに分類、局所制御について比較。【結果】1]マーカー発現および相関:CD133、SOX2、Oct4、c-mycの陽性率は19%, 19%, 35%, 32%であり、マーカー間の相関は皆無。43例がH群、96例がL群に分類。2]全症例を対象とした検討:性別・年齢・最大径・静脈侵襲・リンパ管侵襲は局所制御と相関せず。局所制御は、照射例が非照射例に比べ(5年局所無再発生存率:92%vs79%, P=0.021)、リンパ節転移陰性例は陽性例に比べ(92%vs80%, P=0.047)良好。多変量解析からCRTの有無のみ(HR:3.3, P=0.029)独立性が示された。3]H群の検討:リンパ節転移陰性例は陽性例に比べ(93%vs54%, P=0.008)、66歳未満は以上に比べ(85%vs56%, P=0.035)局所制御は良好であったが、CRTの有無(75%vs74%)は局所制御に影響せず。多変量解析からリンパ節転移の有無のみ(HR:10.2, P=0.030)独立性が示された。4]L群の検討:照射例は非照射例に比べ(98%vs81%, P=0.007) 局所制御は良好であったが、リンパ節転移の有無(92%vs92%)は局所制御に影響せず。【結論】治療前生検組織において癌幹細胞マーカーが発現する症例ではCRTの局所制御効果は不十分であり、このマーカーはCRT適応決定の上で有力な指標になると考えられた。


潰瘍性大腸炎癌化におけるmicroRNA-124,-137,-34b/cメチル化の意義

演  者:
問山 裕二
所属機関:
三重大学大学院 消化管小児外科

背景:腸管の慢性炎症は頻回の粘膜再上皮化を来し、腸管上皮細胞のgenetic, epigeneticな変化を誘発することで,それらが潰瘍性大腸炎(UC)の癌化に深く関与していることが知られている.その中でAge-related methylation geneは,大腸腫瘍を合併したUCの非腫瘍性粘膜で高頻度にメチル化(Field effect)を受けており,大腸腫瘍を合併する高危険群の絞り込みを可能にする新たな危険因子として期待される.今回大腸癌で高度にメチル化されているmicroRNA(-124, -137, -34b/c)に着目し,UC粘膜におけるそれらのメチル化レベルと臨床病理学的因子との関連を検討した.方法:UC粘膜非癌部(NUC:盲腸:n=45,横行結腸:n=45,直腸:n=70),Dysplasia(DUC:n=12)ならびColitic Cancer(CUC: n=13)からDNAを抽出, Bisulfite処理後Pyrosequencing法でmicroRNA(-124, -137, -34b/c)メチル化レベルを測定した.さらにNUC(n=20), DUC(n=12) ならびにCUC(n=13)からRNAを抽出し, microRNA(-124, -137, -34b/c)の発現も合わせて測定した.結果:NUCのmiR-124, -137メチル化レベルは遠位大腸で高く,直腸で有意に高値を示した(miR-124:p=0.01, miR-137:p<0.001).さらに直腸NUCのmiR-124, -137メチル化レベルは診断時年齢(miR-124:p=0.01, miR-137:p<0.001),手術時年齢(miR-124:p=0.003, miR-137:p=0.003),病脳期間(miR-124:p=0.01, miR-137:p=0.04)と有意に相関した.DUC,CUCのmiR-124, -137, -34b/cメチル化レベルはNUCに比し有意に高値で,ROC解析ではそれぞれのメチル化レベルは高精度にCUC,DUをNUCと区別でき,炎症に修飾され病理診断が困難症例の補助診断に有用な可能性が示唆された.さらにCUCを合併している直腸NUCのmiR-124, -137, -34b/cメチル化レベルは合併していない直腸NUCに比べ有意に高値(miR-124:p=0.008, miR-137:p=0.001, miR-34b/c: p=0.02)でfield effectを認め,多変量解析では直腸NUCのmiR-137高メチル群は独立したCUC同定因子であった(OR=5.55, 95%CI=1.40-22.0, p=0.015).一方, miR-124, -137発現は有意に癌化に伴い低下し、メチル化レベルと有意に逆相関を認めた.結語:UCにおけるmiR-124, -137メチル化は部位,年齢及び腫瘍依存型でfield effectを認めた.直腸粘膜のmiR-137メチル化レベルはUCに大腸腫瘍を合併する高危険群の絞り込みに有用な新たな危険因子として期待され,メチル化に伴うこれらのmiRNAs発現の賦活化によりUC癌化を制御できる可能性が示唆された。


10ナノスケール超微細粒子の全身投与はマウス固形腫瘍への核酸デリバリー効果を示した

演  者:
呉 鑫
所属機関:
大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科

(背景と目的) RNA干渉現象に基づいたsiRNAの創薬研究は、世界中で盛んに行われているにも関わらず、比較的にデリバリーされやすい肝臓や腎臓、眼などの疾患以外では、顕著な成果が出ていない。特に固形腫瘍へのデリバリーが難しく、原因の一つとしてナノ粒子の大きさが挙げられ、通常は100nm前後のものが多く、正常組織への集積が問題となっている。今回我々が新たに開発した超微粒子ナノキャリア・スーパーアパタイト(sApa)法はnanomedicineとしては類をみない10nmサイズである。sApa粒子はリン酸、炭酸、カルシウムからなり、血中pH7.4では安定であるが、pH6環境下にある細胞エンドソーム内で速やかに崩壊して、内包物を放出するという特徴がある。我々は既にこのシステムを用いて抗癌剤ドキソルビシンを内包したナノ粒子が、マウス固形腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を発揮したことを報告している(PLoS ONE 8(4): e60428.2013 )。今回は、in vitroのsiRNA導入効率の評価を行うと共に、マウスのおける正常組織と皮下腫瘍への分布蓄積、及びヒト大腸癌皮下腫瘍における抗腫瘍効果を明らかにする。(方法と結果)1、蛍光標識siRNAの大腸がん細胞内への取り込みの比較評価では、sApaは既存のLipofectamineより短時間で(4hr〜)かつ高い導入効率を示し、survivin標的siRNAの導入では、早期の標的タンパクの抑制、およびがん細胞の増殖抑制(48hr〜)効果が認められた。2、ヒト大腸癌皮下腫瘍モデルにおいて、蛍光標識siRNAを内包したsApaをマウス尾静脈より全身投与し、組織切片蛍光顕微鏡解析では、肝臓、脾臓、および腎臓での蓄積(4hrと12hr)が確認されず、腫瘍組織での有意な集積を認めた(naked siRNAの全身投与と比較して)。サイズが小さいために腫瘍血管から漏れ出た後、腫瘍周囲の腫瘍細胞のみならず遠くの腫瘍細胞にまで到達したことも確認できた。3、ヒト大腸癌皮下腫瘍モデルにおいて、survivin標的siRNAを内包したsApaをマウス尾静脈より全身投与して、通常の5分の1程度のsiRNA量で、抗腫瘍効果が確認され、マウスsacrifice後の腫瘍におけるsurvivinの免疫染色でも、標的タンパクの抑制が確認できた。(考察)実験レベルにおいても、皮下固形腫瘍への全身投与で効率的なデリバリー効果を示すシステムがない中で、10nmという世界最小の核酸デリバリーシステムとして、sApaの有効性を示唆された。