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骨軟部

網羅的マイクロRNA解析によるユーイング肉腫の予後因子同定と分子標的治療の可能性

演  者:
中谷 文彦
所属機関:
国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科

【背景・目的】内在性の非翻訳RNAであるマイクロRNA (miRNA)は、mRNAの分解や翻訳の抑制を介して、細胞のがん化や悪性度の維持増悪に関与していることが近年明らかに成りつつあり、大きな注目を集めている。本研究の目的は、Ewing肉腫において、有用なバイオマーカーとなるmiRNAを同定し、その機能解析を行うことによって新規の治療戦略を開発することである。【方法・結果】均一なプロトコール治療が行われた、限局性ユーイング肉腫50例の初診時生検サンプルから抽出した全RNAを使用し、miRNAマイクロアレイを施行した。得られたデータを、再発転移および死亡イベントの有無で比較、有意に差を認めたmiRNA群について定量化PCRおよび多変量解析による検証を行った結果、miR-34aの発現量が高い症例は予後が良好であり、発現量が著しく低い症例は2年以内にほぼ全例が再発転移を来したことから、miR-34aはEwing肉腫の独立した予後因子であると考えられた。次に、12種のEwing肉腫細胞株を用い、In vitroでEwing肉腫におけるmiR-34aの機能解析を行った。その結果、miR-34aはEwing肉腫細胞株のp53 statusと相関し、p53野生型の細胞株ではその発現が増加していた。また、miR-34aの発現量はアガロースゲルにおけるコロニー形成能と強い不の相関を示し、miR-34aの発現量が低いものほど、悪性度が高いことが示唆された。さらに、miR-34aの発現が低下している細胞株でRecombinant miR-34aを強制発現させると、抗がん剤への感受性が増強する傾向があった。【考察】miRNAは20塩基対前後と非常に短い一本鎖RNAで、mRNAや蛋白に比べ検体の保存状態や処理によって影響を受けにくい。さらに、今回同定されたmiR-34aは、p53の機能と密接に関係し、miR-34aの低下がEwing肉腫の悪性度増強につながる可能性が示唆された。【結語】miR-34aは、比較的安定なバイオマーカーであり、miR-34aの機能を基にした分子標的治療の開発が大いに期待される。