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婦人科

当院における子宮頸癌センチネルリンパ節生検の現況

演  者:
辻 なつき
所属機関:
北野病

センチネルリンパ節(SLN)生検は乳癌および悪性黒色腫などの領域ではすでに広く利用されている。SLN生検を利用することで不要なリンパ節郭清を回避することができ、リンパ浮腫というQOLを著しく低下させる合併症のリスクを低下させることができる。子宮頸癌は好発年齢が若く、美容やQOLに関心のある患者が多いため、合併症を減らすことのできる可能性のあるSLN生検のニーズは大いにある。加えて、病巣部が腟鏡を用いればアクセスできる場所であるため、トレーサーの投与が比較的簡便である。しかし子宮頸癌におけるSLN生検の地位は、最新の治療ガイドラインにコメントが記載される程度の認知度であるのが現状で、実際施行している施設は当院を含め数か所と限られている。当院では2009年8月から倫理委員会で承認を得られたプロトコールに従い、同意の得られた子宮頸癌手術予定患者を対象にRI法および色素法の併用でセンチネルリンパ節(SLN)の同定を始めた。当初はSLNという概念に矛盾しないリンパ節が同定可能か否かを検討するため、系統的リンパ節郭清も施行した。50症例を集積した結果、少なくとも片側でのSLN同定率84%、陰性適中率100%と良好な結果を得たため、2012年8月からは事前に同意を得られた症例に対してはSLN転移陰性の場合には系統的骨盤リンパ節郭清を省略している。また、2012年10月からは従来SLN生検に不適とされてきた術前化学療法(NAC)を要するようなbulky tumorについてもSLN生検の対象とし、有用性の有無について検討を行っている。また、より低侵襲な手技を目指して腹腔鏡下手術でも、小切開創から体表用ガンマプローブを利用してSLN生検を実施する工夫を行っている。本研究では、当院における子宮頸癌SLN生検施行61症例を後方視的に検討し、その有用性を報告する。また、SLN同定不能症例について考察し、実施件数は限られるがNAC施行後5症例、郭清省略6症例について現時点での経過報告を行う。


P2 Study of Two PI3K/mTOR Inhibitors in Endometrial Ca. - Japan Lead-in-Cohort

演  者:
Kei Muro
所属機関:
Department of Clinical Oncology, Aichi Cancer Center Hospital, Japan

Background: PF-04691502 (PF-502) and PF-05212384 (PF-384) are potent PI3K/mTOR dual inhibitors having different chemical structures, intended for daily oral and weekly IV dosing, respectively. B1271004 (1004) is an ongoing P2, randomized, open-label, non-comparative, multinational study in recurrent EC. In Western (W) pts, the MTD of PF-502 is 8 mg QD and for PF-384 is 154 mg Qw. Since 1004 is the first in Japanese (J) study, the lead in cohort (LIC) of J-pts was enrolled prior to the P2 part to confirm safety.Materials and Methods: The LIC included 3 treatment arms; PF-502 4 mg/day (Arm A), PF-384 89 mg/wk (Arm B) and PF-384 154 mg (Arm C), given as single agents in J-pts with recurrent EC. The purpose of the LIC is to investigate whether there is significant difference btw J- and W-pts on the safety and PK. Results: Overall, 9 pts were enrolled into the LIC. 3 pts were enrolled to each Arms (Arm A, B and C). Mean age (y) in Arm A was 64 (61-70), in Arm B was 56 (40-69) and in Arm C was 62 (57-71); Median treatment duration (day) for Arm A was 70 (28-84), Arm B was 330 (29-337), and Arm C was 60 (50-77). As of data cutoff, all but 3 pts (2 in Arm B and 1 in Arm C) had discontinued from the study; 4 from PD (1 in Arm A, 1 in Arm B, 2 in Arm C), and 2 due to AE (both in Arm A). Most common drug-related AEs (each 100%) for Arm A were hyperglycemia and rash, nausea and mucositis for Arm B and mucositis and sore throat for Arm C. 1 pt (Arm A) experienced a drug related SAE (pneumoncystis pneumonia). 1 pt (Arm C) had a dose reduction. Discussion: In J-pts, PF-384 was well tolerated at both doses (89 mg and 154 mg). In contrast, PF-502 was not well tolerated in J-pts, with 2 out of 3 pts discontinuing due to AEs. Due to safety issues in W- and J-pts, the global clinical development of PF-502 has been discontinued. The LIC was effective in its goal to evaluate safety and PK in J-pts, and they are currently being enrolled into the P2 part of 1004 to be treated with PF-384.


再発子宮体癌に対するドセタキセル+シスプラチン(DP)療法21例の検討

演  者:
二宮 委美
所属機関:
慶応義塾大学病院

【緒言】再発子宮体癌の治療に関するエビデンスは乏しく、特に化学療法について至適レジメンは未だ明らかではない。我々は再発子宮体癌に対してセカンドライン以降の化学療法として、ドセタキセル+シスプラチン(DP)療法を施行した21例を経験したので報告する。【対象と方法】病理学的に子宮体癌と診断され、手術および術後化学療法を施行された症例のうち、2002年から2012年までに再発と診断され、DP療法をセカンドライン化学療法として施行した18例およびサードライン化学療法として施行した3例を対象とした。DP療法はドセタキセル 70mg/m2、シスプラチン 60mg/m2の点滴静注を原則3週間ごとに投与した。奏効率はWHO基準にて、有害事象はCTCAE ver.4.0にて評価した。対象症例における年齢の中央値は62歳(38-75歳)であり、フォローアップ期間は909日(65-2725)であった。投与サイクル数の中央値は6サイクル(1-11サイクル)であった。【結果】DP療法の奏効率(CR+PR)は57.1%であった。再発部位別奏効率は腟断端、肺、肝では60%以上と高値であるのに対して、リンパ節や腹膜播種では低値であった。G3以上の有害事象は血液毒性では白血球減少81.0%、好中球減少81.0%、貧血9.6%であり、非血液毒性では下痢と倦怠感がそれぞれ14.3%、肝機能障害、末梢神経障害、低Na血症がそれぞれ4.8%で認められた。5年無増悪生存率(PFS)は7.1%であり、PFSの中央値は226日(147-305日)であった。PFSに影響する因子の検討では、treatment-free interval(TFI)が6ヶ月以上の症例が6ヶ月未満の症例に比べて有意に予後良好であり(p=0.01)、platinum-free interval (PFI)が6ヶ月以上の症例が6ヶ月未満の症例に比べて予後良好な傾向であった(p=0.09)。なお、組織型や、ファーストライン化学療法のレジメンについては有意差を認めなかった。【結論】DP療法は再発子宮体癌に対するセカンドライン化学療法として有用であると考えられた。特に、TFIが6ヶ月以上の症例ではその有効性が示された。


若年子宮内膜癌・子宮内膜異型増殖症に対するMPA療法の治療成績

演  者:
田中 良道
所属機関:
大阪医科大学

【目的】近年の晩婚化や子宮内膜癌の増加に伴い、今後妊孕能温存を希望する子宮内膜癌症例が増加する事が予想される。強い挙児希望がある異型内膜増殖症例や筋層浸潤のないG1類内膜癌症例に対しては保存的なホルモン療法が選択肢となりえる。しかしその治療の特殊性から治療内容や期間、成績に関しては施設間のばらつきがあり、十分なエビデンスが蓄積されているとは言い難い。そこで今回当科でMPA (medroxyprogesterone acetate)療法を施行した症例の治療成績や妊娠成績について後方視的に検討した。【方法】子宮温存療法を希望し、MPAを投与した筋層浸潤を認めない子宮内膜癌G1 25例と子宮内膜異型増殖症(複雑型)16例を対象に合併症、奏効率、再発率、妊娠成績について解析した。MPA投与量は400mgあるいは600mgとし、4-6週毎に子宮鏡検下の内膜細胞診・生検を行い、異常所見の消失をもって治癒および投与終了とした。【結果】患者平均年齢は35.0歳、平均BMI値は25.1であった。MPA投与による有害事象として1例で肝機能異常と低K血症を認めた。MPA投与により病変が消失した症例は内膜癌で18/25例(72.0%)、異型内膜増殖症15/16例(93.7%)であった。消失した内膜癌18例の内11例(61.1%)で、また異型内膜増殖症15例の内5例(33.3%)で再発を認めた。再発までの期間の平均は内膜癌で25.5か月、異型内膜増殖症で77.0か月であった。再発がなく妊娠を試みた17例中6例(治療終了からの平均期間26.7か月)で妊娠が成立した。病変が存続あるいは再発し、子宮摘出を行った12症例中3例に筋層浸潤を認めた。子宮摘出症例で再発症例はなく全例経過良好である。【総括】MPA療法の奏効率は比較的高いが再発率も高く、また長期間にわたる厳重な管理が必要である。再発症例では筋層浸潤も存在する事からMPA療法の選択には慎重を要する。


遺伝性乳癌・卵巣癌症候群に対するリスク低減卵巣卵管摘出術の検討

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演  者:
清水 華子
所属機関:
昭和大 産婦人科

【緒言】BRCA1・BRCA2遺伝子の病的変異が原因となる乳癌・卵巣癌を遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と定義される。最初の乳癌が診断されてから10年以内に卵巣癌を発症する割合はBRCA1の変異で12.7%、BRCA2の変異で6.8%との報告されている。卵巣癌を早期発見することは難しく、定期的なSurveillanceによる死亡率の減少効果は示されていない。一方、予防的卵巣卵管切除には卵巣癌発症リスクを90%低減させる効果があるとされている。当院ではIRBの承認を得て、HBOCと診断された患者を対象にリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)を施行している。【対象】これまでに当院で認定遺伝カウンセラーのカウンセリング後に遺伝子検査を受けた乳癌もしくは卵巣癌患者は、2013年3月末日の時点で97(発端者86、家族11)例であった。そのうち、BRCA1変異症例は21例(発端者14 家族 7)、BRCA2変異症例は5例(発端者5 家族 0)、uncertain 9例(BRCA1 6・BRCA2 3)であった。BRCA1もしくはBRCA2変異が同定された症例には十分な遺伝カウンセリングを施行した。その上でRRSOを希望された症例は5例であった。RRSOを施行した5例について患者背景・手術経過・術後病理組織所見などについて報告する。当院IRBで承認された基準より、BRCA1・BRCA2変異陽性で35歳以上の挙児希望のない患者を対象に、認定遺伝カウンセラーがカウンセリングを行い、患者の自立的意志により本手術を希望した5人の女性を対象とした。【結果】HBOCと診断された患者26例のうち挙児希望がなくリスク低減手術を希望した患者は5例(BRCA1 :3例、BRCA2 :2例)であった。5例はすべて乳癌に罹患し治療中であった。手術は全例が腹腔鏡下に行なわれ、3例が両側附属器切除を、2例が単純子宮全摘を施行した。摘出卵巣卵管の全割面標本を作成し詳細な病理検索を行なったが、悪性所見は認めなかった。全例において腹水もしくは洗浄腹水を採取し細胞診検査を施行したが悪性所見は認められなかった。【結語】低侵襲な腹腔鏡下手術を選択したが全例とも安全に施行出来た。今回、摘出卵巣卵管・術中腹水細胞診に悪性所見は認めなかった。RRSOは未発症者に対する予防的手術であるため、オカルト癌検索のための詳細な標本診断が必要であるが、標本作成方法やその検索、術後のSurveillanceなどの標準化が必要であり、課題である。また、RRSOを希望しないHBOC患者に対する卵巣癌のSurveillanceについても検討する必要があると思われた。


当科における卵巣癌IV期49症例の予後因子解析

演  者:
濱西 潤三
所属機関:
京都大学

【目的】卵巣IV期症例の多くは予後不良であるが、組織型、転移様式など症例により様々であり、ときに長期生存を得ることもある。しかしながIV期症例に限定した臨床的検討がなされた報告は少ない。そこで当科における卵巣癌IV期症例の臨床病理学的因子および予後因子について後方視的に解析した。【方法】1991年から2011年に同意のもと当院で初回治療を行った上皮性卵巣癌471例のうち、IV期49例の臨床病理学的因子(年齢、組織型、転移部位、治療法、手術時期・完遂度)および予後因子について後方視的に解析した。【成績】IV期症例の5年生存率は30%、5年無増悪生存率は20%。optimal debulkingの達成率は、Primary debulking surgery(PDS:32例)群で34%(11例)、Interval debulking surgery(IDS:10例))で60%(6例)であった。debulking surgeryを行ったPDS群とIDS群はDebulking surgery 無施行例(non-DS群7例)群に比してともに予後良好であった(p<0.01、p<0.05)。さらに、当科でのIV期症例の全生存率は、術後7年でプラトーに達することから、術後7年以上生存した7例について検討した。その結果、すべての症例で手術を完遂(optimal)していた。そのなかでIV期を規定する遠隔転移(M)因子は全例で1個でありそのうち5例(71%)は、胸水細胞診陽性でったことから、M因子の数による予後解析をした。その結果、M因子が1個である症例や胸水細胞診陽性では、2個以上の症例に比して有意に予後が良好(p<0.05)であることが分かった。さらに遠隔転移部位のうち、TNM分類のM因子(遠隔転移)については、胸水細胞診陽性23例(47%)、肝臓16例(33%)の順に多く、1因子のみの群は2因子以上の群に比して予後良好であり(p<0.01)、特に長期生存例に胸水細胞診陽性のみの症例が多かった。【結論】卵巣癌IV期でも切除完遂例では予後良好な症例もあることから、可能な限り手術を行うことがIV期症例の予後改善のために重要と考えられる。さらに遠隔転移(M因子)が一個でありかつ手術が完遂できれば7年以上の長期生存が期待できる可能性があることから、正確な転移の評価も求められる。