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地域連携

S-1を用いた化学療法例の病院・院外薬局連携の有用性

演  者:
山田 知里
所属機関:
愛知県がんセ中央病 看護部

【背景】外来化学療法においてS-1を用いた化学療法例では緊急入院の頻度が高い傾向であるとの報告がある。S-1を用いた化学療法例のアドヒアランス向上と、重篤な有害事象の軽減を企図して病院・院外薬局連携を2012年初に開始した。【目的】病院・院外薬局連携の実践が重篤な有害事象の発生頻度に影響を及ぼしたかを調査する。【方法】病院・院外薬局連携の内容は次のものである。1.S-1併用療法の治療スケジュールを明記したS-1手帳を作成し用いた。2.院外薬局でもS-1手帳を用いて服薬指導を行った。3.病院・院外薬局の連絡会を定期的に開催し連携体制の強化を図った。4.有害事象に関する看護師による電話対応業務において下痢出現時の対応に関する指示を標準化した。5.支持療法の治療開始時事前処方を勧めた。検討方法は、S-1を用いた消化器癌化学療法例を、2011年1月〜12月施行例を連携開始前群、2012年2月〜12月施行例を連携開始後群とした。重篤な有害事象を化学療法に関連した緊急入院をイベントとした。両群間での緊急入院の発生頻度と入院契機となった有害事象、癌種、レジメン、支持療法処方状況、有害事象電話対応状況を後方視的に検討した。【結果】症例数は連携開始前/開始後:368/363。癌種内訳は胃癌:195/184、大腸癌:65/56、胆道癌:24/26、膵癌:84/97であった。使用レジメン内訳はS-1単剤:228/230、S-1+CDDP:83/82、S-1+IRI:16/10、S-1+L-OHP:25/15、S-1+GEM:12/17、その他:4/9と症例数、癌種、レジメンの分布にかわりはなかった。緊急入院は29(7.9%)/9(2.5%)と減少し、入院契機となった有害事象内訳は、下痢:10/2、悪心嘔吐:3/1、食欲低下:16/4、発熱:6/2といずれの事由でも減少した。緊急入院した症例の癌種内訳は胆膵癌:7/6例、胃癌:14/4、大腸癌:8/1であった。支持療法の事前処方内訳は制吐剤:127/159、止痢剤:94/134、抗生剤:93/107と増加した。電話対応も3/12に増加した。その内容はGr2以下の有害事象の対処であり、軽快の転帰であった。支持療法の増加、電話対応も含めた病院・院外薬局連携の指導体制の強化をとおして、緊急入院の減少が観察された。【結論】重篤な有害事象の減少をもって病院・院外薬局連携の有用性が示唆された。