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抗がん薬の職業曝露

外来化学療法センターにおける抗がん剤環境曝露の現状

演  者:
佐藤 久子
所属機関:
北里大病化学療法セ

【背景】多くの抗がん剤は、がん細胞に対しては殺細胞作用がある一方、分裂している正常細胞に作用し、変異原性、催奇形性、発がん性がある。医療従事者が抗がん剤に曝露する経路としては、エアロゾルの吸入、皮膚・目への付着、汚染された手指からの食物などを介した経口摂取などが考えられる。近年、医療従事者の抗がん剤曝露について啓発・予防が行われており、本院においても抗がん剤を安全に取り扱うための指針を作成した。しかし、医療従事者が実際どのくらい抗がん剤に曝露されているのかの調査報告は少ない。【目的】外来化学療法センターにおける環境中のシクロフォスファミド(CPA)とフルオロウラシル(5-FU)を測定し、医療従事者の抗がん剤曝露リスクを明らかにする。【方法】治療室や患者トイレの床、および看護師の防護服などにサンプルシートを貼付し、抗がん剤の曝露量を測定した。(分析はシオノギ分析センター株式会社)【結果】測定箇所は全部で21箇所、うち8箇所(38%)から抗がん剤が検出された。CPAは男女トイレ床、病室入口と点滴棒下の床および看護師グローブの5箇所から検出された。特に男子トイレ床では、すべての測定日にCPAが検出され、1回平均217.6 ng/100cm2であった。5-FUは男子トイレ床、病室内PCマウス、薬剤トレイの3箇所から検出された。ナースステーション、ケモブロックガウン、キャップ、マスクでは抗がん剤の検出は認めなかった。【結論】ガウン等から抗がん剤が検出されなかったことから、点滴接続など抗がん剤投与時の院内曝露対策は有効であると考えられたが、抗がん剤の曝露源としてトイレ(排泄尿)が重要であり、今後の対応が必要である。