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造血器・リンパ

悪性リンパ腫患者に対する化学療法後のヘルペスウイルス感染発症のリスク因子

演  者:
田中 弘人
所属機関:
日本医科大付属病 薬剤部

【背景】悪性リンパ腫に対する化学療法は、強度かつ長期の免疫抑制状態を惹起し、特に帯状疱疹等のヘルペスウイルス感染 (HVI) は、疼痛等によりQOL低下の一因となる。造血幹細胞移植例やpurine analogueまたはbortezomib使用例にはacyclovirの予防投与が推奨されているが、化学療法が施行された悪性リンパ腫患者に関してHVIのリスク因子を検討した報告は少なく、予防投与がなされずHVIを発症する患者がしばしば経験される。今回、acyclovir予防投与が必要な患者を予測することを目的とし、化学療法が施行された悪性リンパ腫患者におけるHVI発症のリスク因子について検討した。【方法】調査対象は2010年11月 - 2012年5月に当院で何らかの化学療法を施行した悪性リンパ腫患者184例とし、そのうち化学療法中にacyclovirの予防投与が行われた20例を除く164例を解析した。HVI発症頻度やHVI発症に関わる化学療法開始時の患者背景因子について後方視的に調査した。リスク因子の評価については単変量解析及び多重ロジスティック回帰分析を行い、HVI発症群と、非発症群で比較した。【結果】年齢中央値 (範囲):68 (21 - 84) 歳、男 / 女:96 / 68名、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 / ろ胞性リンパ腫 / その他:81 / 31 / 52名、初発 / 再発・再燃:117 / 47名、Rituximab併用有 / 無:125 / 39名、ステロイド併用有 / 無:129 / 35名、リンパ球数中央値:1220 (/ mcL) であった。HVI発症件数は15例 (9 %) で、そのうち13例が帯状疱疹であった。単変量解析を行いP < 0.05であった年齢 ≧ 75歳 (HVI発症群 vs. 非発症群:53 % vs. 23 %;P = 0.025)、化学療法期間中の発熱性好中球減少症 (FN) 発症 (47 % vs. 24 %;P = 0.045) について多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、年齢 ≧ 75歳 (P = 0.019、オッズ比 = 4.953、95 % 信頼区間:1.30 - 18.90)、FN発症 (P = 0.010、オッズ比6.301、95 % 信頼区間1.57 - 25.37) のいずれもリスク因子として同定された。【結論】化学療法を施行した悪性リンパ腫患者において、年齢75歳以上と化学療法期間中のFN発症がHVI発症のリスク因子であることが示された。